豹変した母へ「女王陛下のようにスープを」 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん
撮影/百井謙子
フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。重苦しかった食卓を一変させた、ある朝の出来事とは。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
一日の中で母の様子がめまぐるしく変わる、季節の変わり目。
寝る前は「お風呂に入れてくれてありがとう」「いろいろお話しできて楽しかったわ」と、感謝の言葉をたくさん言ってくれたのに、朝起きると別人のように豹変していることがあった。表情は険しく目が座り、首がうなだれて上体が左に傾き、話しかけても視線が合わない。
体が曲がっていると食事を喉につまらせないか心配になる。そんな時に「姿勢が悪いよ」と注意しても、本人としてはまっすぐ座っているつもりなので、火に油を注いでしまう。
ある日、「女王陛下のようにスープを飲んで」とお願いしてみた。元演劇部だったからだろうか? すぐにあごを上げ、ツンと鼻を高くして胸を張ってくれた。よしっ。母は、しばらく女王陛下のような気品あふれる風格で「ミニトマトとにんにくのかき卵スープ」をスプーンで口に運ぶ。
そのうちそんな自分がおかしく思えたのか、母が思わず吹き出し、重苦しかった食卓の空気が一瞬でゆるんだ。
ミニトマトとにんにくのかき卵スープ
ミニトマトは先にオリーブオイルで炒めて水分を飛ばしてうまみを引き出します。にんにくたっぷりなので、卵を入れてマイルドに。隠し味のしょうゆで、親しみやすい味になります。トーストを浸しながら食べるのもおすすめです。
材料 2人分
ミニトマト 10個
にんにく 2かけ(65g)
卵 2個(100g)
オリーブオイル 大さじ1
赤唐辛子(輪切り) 1/4本分
固形スープの素 1個
しょうゆ 少々
乾燥パセリ(あれば) 適宜
作り方
- にんにくは芯を除いて薄切りにする。ミニトマトは輪切りにする
- フライパンにオリーブオイル、にんにくを入れて弱火にかけ、香りが出てきたらミニトマトの水分を飛ばしながらしんなりするまで炒める
- 鍋に水400ml、固形スープの素、2を加え、強火にしてひと煮立ちしたら、といた卵を流し入れてかき卵にする
- しょうゆで味を調え、器に盛り、パセリをふる