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認知症と診断されてからでは遅い? 専門家が教える「備え」とは

最近は、認知症に関する知識が普及しつつあり、全く問題がないのに認知症を心配して受診するケースが増えているそうです。しかし、認知症であると診断されてからでは、後に自分も家族も困るケースがあるようです。何を備えておけばよいでしょう。京都府立医科大学附属病院精神科・心療内科の成本迅先生に聞きました。

契約の見直しをしている様子

いい人間関係をつくっておくことが一番の備え

認知症を早期に発見することは、治療の面からだけではなく、生活の面からみても大切なことです。進行してからの発見となると、周囲に対する警戒心が強くなっていて、介護保険サービスなど支援体制の介入を拒む、金融機関でお金をおろせずに経済的に困窮する、持病の通院が滞って悪化する、生活リズムが乱れて症状が悪化したりうつなどの合併症が現れたりする、といった問題が次々と出てきてしまうのです。

大ごとになる前にスムーズに支援体制を整えていくためには、よきタイミングで受診することです。けれども認知症の特徴として、診断される2年ほど前から、自分の変化を自覚することが難しくなっていくという問題があります。たくさんの患者さんを診てきて感じるのは、いい人間関係をつくり、つねに人とコミュニケーションをとっておくことが一番の備えになるということです。そうすれば変化にいち早く気づいてもらうことができ、よきタイミングでの受診につながります。

同居している家族でもいいのですが、家族関係によっては自分の子供から指摘されると反発してしまうこともあります。そこでお互いに、変化があったら受診をすすめられるような関係性の友人をつくっておくことをおすすめします。

認知症の症状は人間関係や環境に大きく左右されます。いい人間関係をつくっておくことは、認知症になってからも大きな助けになるのです。

自分らしく生き切るための意思の確認を

そしてもう一つ、診断前にやっておくべきことが「意思の確認」です。これは大きく分けて「生命に関わること」と「生活を豊かにすること」の二つがあります。

生命に関わることとはまず、認知症が進行して口から食べられなくなったときにどうするか、ということです。具体的には、お腹に開けた穴や鼻から食道に入れた管から水分や栄養を注入する「胃ろう」や「経鼻経管栄養」、点滴で栄養を送る「中心静脈栄養」といった方法をとるかどうか。また急変したときに人工呼吸や心臓マッサージなどで延命措置をするかどうか。

私たち医療従事者にとって、認知症の診断後、どのタイミングでどのような形で生命に関わる意思を確認するかということが問題になっています。本人が決められない段階になると、最終的には家族が決めることになりますが、精神的な負担が大きく、看取ったあとに『死を早めてしまったのではないか』『苦しみを長引かせてしまったのではないか』などと悩み続けるケースもあります。診断前から意思を示していたら私たちも家族も悩まずにすむのです。

誰しも一度は考えたことがあるような内容ですが、それを自分の頭の中だけにとどめておくのではなく、誰かに伝えなくてはなりません。判断能力がなくなったときに、本人に代わって後見人が財産管理や施設の入退所の契約などをする「成年後見制度」がありますが、治療や延命措置の医療同意は後見人の職務ではありません。

医学的な希望に関してはかかりつけ医に伝えておくのがいいでしょう。急性期病院に紹介状を書いてもらうときなどに本人の希望も書いてもらうと、信頼度の高い情報となります。

意思確認をしておきたいもう一つの「生活を豊かにすること」とは、具体的にはお金の使い方です。家族や後見人など、財産管理を担う人にとって、生活を維持すること以外にお金を使うのは、抵抗があるものです。

例えば野球が好きだから、野球観戦には連れていってほしい、食べ歩きが好きだから外食には連れて行ってほしいなど、優先してほしいことを伝えておくといいでしょう。

意思はエンディングノートなどに書いておくことも一つの方法ですが、いざというときにどこにしまってあるのかわからないといったケースもあります。日頃から自分の意思を周囲に伝えておくことも大切です。

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