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今日は晴天、ぼけ日和

バサバサの歯ブラシ、枯れた仏花…几帳面な母に感じた小さな違和感

《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》

バサバサに広がった歯ブラシ

あれ?

数ヶ月ぶりに帰省した実家の洗面台。
目に留まったのは、バサバサに広がった歯ブラシ。

あの几帳面(きちょうめん)な母が、こんなになるまで歯ブラシを使うなんて。

ささいな違和感に、胸がざわっと波打った。

枯れた花

ふと、見回すと、
仏壇に供えた花も枯れている。

「花は天国に行った人のお着物になるのよ」

そう言って、母は毎日水を替え、
色鮮やかな花を絶やさなかったのに。

部屋のあちこちに小さな違和感を見つけるたびに、私は思った。

まさか、認知症?
それとも、これが年齢を重ねるということ?

振り向く女性

でも、私は知っている。

たとえ母が認知症だとしても、
心配しすぎることはない。
ぼちぼちと暮らしていける道があると知っているから。

明日も明後日も、十年後も、
母のこの笑顔を変わらず見るために。

まずは、やれることをひとつずつ。

新年に帰省したとき、久しぶりに会った親の様子が、なんだかいつもと違った。
まさか、と思って検査を受けたら、認知症と診断された。

——以前、こんな話を知人から聞いたことがあります。

家族だからこそ気づける、暮らしの中のささやかな違和感。
それはとても貴重なサインです。

この小さなサインを見過ごさず、認知症検査へつなげて正確な診断を得られれば、
適切な治療やこれからの暮らしの準備を、すぐに始めることができます。

仮に取り越し苦労だったとしても、「備えあれば憂いなし」。
健康に関するさまざまな情報を得られるでしょう。

とはいえ、「すぐに認知症の検査へ連れて行くのは、本人にも家族にも心理的なハードルが高い」と感じる方もいるかもしれません。 

そんな場合は、まずご本人がよく通う病院の医師に相談してみたり、
ご本人の居住地にある地域包括支援センターに電話してみたりするのもよいでしょう。

そんなふうにできることから、少しずつ。 

自分も家族も心理的な折り合いをつけながら進むことが、
介護の歩みにはちょうどいいペースだと思うのです。

《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》

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