心配だった災害時避難 敬老のお祝い金をきっかけに、一気に前進
タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。今回は、民生委員の方が敬老のお祝い金を持って訪ねてきた時のお話です。
民生委員の聞き取り調査
ピンポーン。
「民生委員です。敬老のお祝い金をお渡しに参りました」
10月に入ったある日、民生委員の方が訪ねてきました。昔は毎年いただいていた敬老のお祝い金ですが、何年か前に制度が変わって、もういただけないものとばかり思っていました。高齢者の数が増加の一途を辿(たど)るなか、見直しが相次ぐのもさもありなんと思っていたのですが、どうやら私たちの住む自治体では、節目の年齢に贈呈されるらしく、母は、今年その対象年齢だったようです。
タブレットを片手にいらっしゃいました。
「お受け取りのサインをお願いします」
代理人と書かれたボタンを押して、タッチペンでサイン。手渡しではあるものの、数年の間に随分時代は進んだなと感じます。受け取りの署名だけではなく、本人の状況、普段から支援があるのかなど、選択式の質問が10項目以上。次々タッチして回答していきます。その上で、「何か困っていることなどありますか?」と質問されました。私は常々不安に思っている「災害時の避難」と答えました。
今年1月下旬には避難行動要支援者名簿への登録申請に区役所に行ったのですが、その後、登録の連絡はないので、どうなっているのかなと漠然と思っていた旨をお伝えしました。もし災害が発生したらマンションのエレベータは止まるので、車いすでしか移動できない母とどういう行動をとるのが最善か。おそらく実際の避難は難しいと思いますが、要介護5の人がここに住んでいるということだけでも把握してもらえると心強いと感じます。すると、「わかりました。まず、避難行動要支援者の名簿に載っているかどうか、明日、区に問い合わせてみます」と言って、帰られました。
翌日。ピンポーン。
民生委員の方が、再び我が家を訪ねてきました。
「昨日お話ししていた避難について、問い合わせたのでお話ししようと思いまして」
早速! 迅速な対応に驚きながら迎え入れました。「まず、避難行動支援者名簿に登録されているかということですが、登録されていました」。助けを求めても誰にも届かないのではないかという不安からは、ひとまず解放です。その上で、さらにタブレットでの聞き取り調査が行われました。
「具体的な支援方法」の項目には、車いすで適切な場所に避難するための誘導をお願いしたいという希望を記載。
「避難時の留意事項」は何を書けばよいのかすぐには思いつきません。民生委員の方に相談すると、「避難所で段ボールの上に寝るとなったら出来ますか?」とのご質問。今はエアマットで上半身を30度近く上げた状態で、タオルなどを首や肩周りに置いて寝ています。現実的には難しいかもしれません。「じゃあ、それを書きましょう」。他にはトイレ介助、衛生面、投薬…。会話から回答の糸口を探って記載しました。
さらに、「障がいをお持ちの方向けのサポートカードはお持ちですか?」。障がいのある人が避難所を利用するときに必要な支援などをまとめたカードだとか。作成を検討することになりました。
敬老のお祝い金をきっかけに、一気に我が家の避難への備えが進みそうです。これまで介護については、ケアマネジャーさんと相談してきましたが、公的支援など、社会制度にまつわることは、自ら区役所に行っていました。しかし、適切な相談窓口がわからず、複数の窓口をはしごすることもしばしば。今回、民生委員の方が、その橋渡しをしてくださって、滞っていた案件が一気に前に進んだことに感動。民生委員の存在の大きさを感じると共に、敬老のお祝い金の贈呈は、お金の配付以外に高齢者の声を拾い、つながりを持つ貴重なきっかけでもあったことを知りました。廃止、縮小は時代の流れですが、一方で、対面の大切さを感じました。