威力発揮の便利グッズ おむつ交換での排泄物処理もまったく問題なし
新卒で入社した出版社で、書籍の編集者一筋25年。12万部のベストセラーとなった『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』(多良美智子)などを手がけた編集者が、40代半ばを目前にして、副業として訪問介護のヘルパーを始めました。今回は、ヘルパーとして働く中で知った、ちょっとした介護の便利グッズについてです。
排泄介助も手袋のおかげで抵抗感なし
副業としてヘルパー業をスタートしてしばらく後、おむつ交換ありのサービスに初めて入ることとなりました。そのとき、事業所の担当の職員さんから「排泄(はいせつ)介助、大丈夫ですか?」と聞かれました。
「介護職員初任者研修を修了してヘルパーとなっているので、もちろんやり方はわかっています」と答えたら、「いえ、そういう意味ではなく。初任者研修では、実際の排泄物を扱ってはいないですよね。自分も最初は抵抗があって、慣れるまで少し時間がかかりましたが…」と心配してくれている様子でした。
たしかに、初任者研修でのおむつ交換は、あくまで疑似でした。介護現場でのリアルな排泄物の処理は未経験です。とはいえ、おむつ交換は子どもたちのもので慣れています。排泄物に抵抗はないつもりでした。
「でも、大人と子どもでは、においなんかも違いますからねぇ…」と職員さん。
では実際に、大人のおむつ交換を体験してみて、どうだったでしょうか?
──はい、大丈夫でした。やはり子どもで慣れていたことはありますが、最大の理由は、別にありました。それは、使い捨て手袋をつけていたからでした。
ヘルパーで働く際、体に触れる介護をするときには、手袋をはめることになっています。当然、おむつ交換も手袋をつけて行います。つまり、すべては手袋越しであり、私自身は直接には手を触れないわけです。
だから、まったく抵抗がありませんでした。仮に指に便がついても、手袋についただけ。拭き取ればいいし、あとで手袋を捨てればいい。私自身の手は一切汚れません。手袋があれば“無敵”だと感じました。
介護の現場で使われている使い捨て(ディスポ)手袋は、薄いゴム製でぴったりフィットし、手指の動きを邪魔しません。医療や食品管理の場などでも使われています。
こういうタイプの手袋を、これまで使ったことがありませんでした。使い捨て手袋といえば、ポリエチレンの手袋。指にフィットするタイプではないので、細かい作業はしづらいものだと思ってきました。
それにしても、手袋のような小さなグッズが、これほどの威力を発揮するものとは知りませんでした。もし手袋なしだったら、排泄介助への抵抗感は全然違ってくると思います(もちろん、素手での排泄介助はありえないのですが)。
加えて、新型コロナ対策により、サービス中はマスクをつけるようになりました。感染症法上の5類になった今もマスク着用は必須です。マスクのおかげで、排泄物のにおいもシャットアウトされています。
「道具」ひとつで介護の負担感は減るものなのだな、と実感しています。
使い捨てで吸収力もある、紙製の防水シーツ
手袋やマスクはささやかな例ですが、介護負担を軽くするための便利グッズは、今たくさんありますね。
私が「これはいいな」と思ったのは、ベッドに敷く紙製の防水シーツです。
防水シーツとは、失禁やおむつからのモレがマットレスや敷布団にしみないよう、かけるものです。
布製の防水シーツは知っていました。子どものおねしょ対策に使っていたことがあります。しかし、布製の防水シーツを使うと、たしかに下にはしみていきませんが、シーツ自体はぬれるので、洗わないといけません。毎日のように、大物のシーツを洗濯するのは大変です。
そこで、あるお宅では、布製の防水シーツでまずベッドのマットレスを保護し、さらにその上に紙製の防水シーツをセットするようになっていました。尿モレによってぬれやすい場所である、背中から太ももにかけてガードするように敷きます。
紙製防水シーツは吸水力があり、おむつからのモレ程度の量であれば、下に浸透することもなく、しっかりキャッチしてくれます。万が一、失禁量が多くてしみ出してしまっても、下は布製の防水シーツが守っており、安心です。
なんといっても、紙製は使い捨てなのが助かります。洗う手間がありません。紙製でも丈夫にできているので、汚れない限り、毎日交換する必要もないでしょう。
こんなすぐれ物があるとは、知らなかったなあ…。
今は特養(特別養護老人ホーム)で暮らす母を、父が自宅で介護していたとき、やはりおむつからの尿モレがありました。ベッドのシーツが頻繁にぬれて困っている父に、わが家で使わなくなった布製の防水シーツをあげ、「助かったよ」と感謝されたことを思い出しました。
あの頃、紙製の防水シーツも知っていたら、もっと父の介護がラクになっていただろうにな…と悔やまれます。