災害時、マンションのエレベーターが停まったら?避難時要支援者の備え
タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。いざ自然災害が起きたとき、障害のある家族をどのように守れば良いのでしょうか。母親が床に落下した際に踏み台の上に乗せることすら難しかった経験から、自宅の防災について改めて考えてみたときのお話です。
防災対策
最近、改めて我が家の防災について考えました。先日、母が床に落下した時、たった18センチが持ち上がらず、踏み台の上にのせるのに1時間近くかかりました。そんな私が、災害時、母をどうやったら守れるだろうかと。
支援を必要としている他の方々はどんな準備をされているのか気になって、色々なお宅を訪問している、訪問リハビリの理学療法士(PT)さんに聞いてみました。
「うーん、どうだろう? 来週までに聞いときますね」
ということで、翌週、再び質問すると、
「実は、どうされてますか?って聞いたら、『皆さんどうしてるんでしょう?』って逆に質問されて、他の人がどうしているか、聞いたら教えてくださいって言われたんです。で、次のお宅で聞いてみたら、また『皆さんどうされてるんでしょう?』って。そうやって、次々聞いているうちに、娘さんのお宅に戻って来ちゃいました」
明確な答えがないまま1周したというのです。
ケアマネさんとも話しました。災害時、マンションのエレベータは停止します。階段での避難に車いすは無理です。おんぶ用の補助具というものがあり、実際母の通うデイサービスでは、東日本大震災のとき、その補助具で利用者さんを背負って7階まで送り届けたそうですが、その職員さんは建設関係の仕事をしていた男性。股関節と半月板を痛めた私が、自分より体重の重い母を背負って階段を下りるのは、現実的ではないという結論に至りました。
色々と調べていく中で、避難行動要支援者名簿というものを知りました。災害が発生したときに自ら避難することが困難な人の情報を名簿に登録し、日頃の見守りなどを通して、災害時の避難支援等につなげようというもの。市町村で作成を義務づけられています。家族と同居していても、本人と家族の力だけでは避難が困難な場合は、名簿登録の対象となると、自治体のHPに明記されていました。ケアマネさんに相談したところ、「申請してみたらどうですか?」ということで、1月下旬、自治体に問い合わせてみました。すると、
「お話を聞く限り、名簿に載ると思うのですが、実はつい先日、新年度の申請を締め切ったばかりなんです」
「え!?」
「例年1月半ばに締め切っているようで。今からの申請だと、再来年度、1年2カ月後の掲載になります」
1週間問い合わせが遅かったことで、再来年度になるなんて!
実は、ホームページに申請の締め切りに関する記載がなく、随時申請できるのかと思っていたのですが、「4月に名簿作成」という記述があったので、今年度中、2024年3月までに申請が必要なのかなと解釈していました。ケアマネさんやPTさんの返答を待っている間に締め切りが過ぎていたなんて…。自力での避難対策を模索する前に、まず問い合わせるべきだったと後悔の念が湧いてきます。大きなショックを受けていると、担当の方が、「実は私、担当になったばかりでして、私が市民の立場だったら、これ、ちょっとどうかと思うので、まず、今後は締め切りを明記するようにします。それから、今、申請していただけるということですし、締め切ったばかりで、名簿を作ると言ってもまだ1月なので、なるべく来年度分で申請できるようにしてみます。ただ、お約束はできません」と言って、一応、申請書を預かってくださいました。
現実には、名簿に載ったとしても、大きな災害が起きたら、支援してもらえる状況にないであろうとは思っています。しかし、どこかのタイミングで安否確認をしてもらえるのではないかと。事前に避難計画の相談ができることも、心強く、有難いです。すべては、申請を受理してもらえればの話ですが。
要支援者の備えは、改めて難しいと感じました。