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夏も週に2回しか入浴しない義母 におって困ります【お悩み相談室】

ユニットバス、Getty Images
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認知症介護指導者の落川晃央さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。

Q.同居している義母(70代)が数カ月くらい前から、「疲れる」という理由で週に2回程度しかお風呂に入らなくなりました。夏なのでにおいますし、不潔なので何とかしてほしいのですが、夫は「病気になるわけではないし、本人がいいなら放っておけ」と言います(40代・女性)

A.本人ファーストで考えると、夫の考えもよくわかりますし、週に2回の入浴でもありだと思います。ただ、すべてにおいて本人の意思を尊重すればいいかというと、介護の現場ではそうはいかない場面もあります。QOL(生活の質)は、主観的なものと客観的なものがあり、お義母さんにとっては週に2回の入浴がベストである一方、客観的QOLを考えると、入浴の回数を増やしてさっぱりしたほうがいいとなります。客観的QOLだけを優先すると、無理やり入浴させることになりますから、私たち専門職はいかに主観的に「お風呂に入ろう」という気になってもらうかということを考えます。

私が勤務する特養でも入浴を拒否される方がいらっしゃいますが、その理由は本当にさまざまです。「異性に介助されたくない」「夜ならいいが日中は入浴したくない」「集団で入浴するのが嫌だ」「脱衣所に置いた洋服を盗られるかもしれない」「スタッフが用意した着替えが気に入らない」……。こうした理由を言葉で表現できず、本人に聞いてもわからない場合は、普段の会話や拒否したときの言葉から考えたり、スムーズに入浴したときと拒否したときの状況を比較したりして探ります。理由さえわかれば、例えば介助するスタッフを替える、入浴の時間帯を遅くするといった対応ができます。お義母さんは「疲れる」ということが理由のようですが、本当にそれだけかということを、普段の様子や言動などから考えてみるといいと思います。

疲れることだけが理由であれば、シャワーだけさっと浴びることを提案したり、お義母さんが座りやすそうなバスチェアを置いたりするのはいかがでしょうか。足湯で足だけでも浸かってもらい、蒸しタオルで体を拭くという方法もあります。

声がけをする際は「臭いから」「不潔だから」と言って入浴を促すのは、あまり効果的ではありません。それよりも「さっぱりして気持ちがいいですよ」など、入浴のよさを伝えるほうが「入ろうかな」という気持ちになるものです。また「今日は特別な入浴剤を入れたからぜひ入って」「すごくいい香りがする入浴剤を入れたから、嗅いでみて」というのもおすすめです。

暑い時季に入浴してもらえないと、家族としては特に気になるかもしれません。お義母さんにすすんでお風呂に入りたいと思ってもらえるといいですね。

【まとめ】同居している義母が「疲れる」と週に2回しか入浴せず、においが気になるので何とかしてほしいときには?

  • シャワーだけ浴びることを提案する、ラクな姿勢で座れるバスチェアを用意するなど疲れないような対策をする
  • 入浴したがらない理由がほかにありそうな場合は、お義母さんの言動などからほかの理由を探る
  • 「入浴しようかな」という気になってもらうため、声がけを工夫したり、入浴剤を入れたりする

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫

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