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今日は晴天、ぼけ日和

昨今話題にのぼる免許返納…自転車は?体の変化に応じた生活のシフトとは

《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》

自転車の前に飛び出した猫をよけるひと

危ないっ!!

急に飛び出してきた小さな影を避けて、
自転車のブレーキを思いっきりかけた。

大きくよろめき、転倒しそうになった私を横目に、
猫は、知らん顔で町なかに消えていった。
事故にならなくて、よかった!

だけど、昔はもっと身軽に反応できたはず。
40代なかばになった私の小さな老いに、ちょっとしょんぼり。

自転車のやめ時を考えるひと

もしかしたら人によっては、自転車にもやめどきがあるのかもしれない。

——自転車を手放したら、どうなるだろう?

毎日の買い物もめんどうになるし、
ちょっとそこまで出かけるにも、
バスや電車を使ったり、歩いたりするはめになる。

でもなにより歩くのは健康的だし、
重い荷物を運ぶときには、リュックやショッピングカートを使えばいい。

とはいえ、生活を急に変えるは現実的に難しい。

歩くひと

それならばと日常のなかで、
自転車を使わない時間を増やしてみることにした。

——あれから数年。
私は自転車を手放した。

年齢を重ねるのが一日ずつなように、
暮らしの変化もちょっとずつが、いい感じ。

自動車に比べ、誰でも気軽に乗れて、生活空間を行き来することができる、自転車。

だからこそ、高齢になってもやめどきが見落とされがちです。

私の祖母は自転車を愛用していましたが、
70代のある日転倒し、それから乗るのをやめました。
幸いケガもなく、ひとさまにご迷惑をかけることもありませんでした。

私はその記憶が強くあったため、
早めに自転車に乗らない生活にシフトしました。

もちろん、生活環境や身体能力は人それぞれ。
高齢になったら誰もが自転車の乗車をやめましょう、とすすめるものではありません。

ただ、運動能力が衰えてきて不安に思われている方やご家族がいらっしゃったら、
この機会にちょっと振り返ってもらえたらと思うのです。

ゆるやかに変化する体と、生活に生まれたズレを思いやりながら、
ビクビクしたり、不安を感じたりせずに、

日々を過ごしていくにはどうしたらよいか。

それが、自分にも周りにも無理がない暮らしかたを、
発見できるコツではないでしょうか。

《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》

 

 

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