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コマタエの 仕事も介護もなんとかならないかな?

これから介護が始まる人に、介護経験者が「ぜひ伝えたい」と思うこと

駒村多恵さん
駒村多恵さん

タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。テレビの番組内で、自身の経験を交えながら、親の介護特集のリポートを担当した時のお話です。

親の介護特集

NHK「あさイチ」で、親の介護について特集しました。最近周りから親の介護について質問されることが増えてきたこともあり、普段は料理や園芸のコーナーを担当していますが、今回は私の経験も交えながらリポートを担当。いつもより短い40分ほどの放送にもかかわらず、1000件を超えるメールを頂戴し、日々介護に携わる方々の人知れず抱えている苦悩を感じるとともに、「これから介護が始まる人にこれを伝えたい!」という内容のものが想像以上に多かったことにも驚きました。

今回スポットを当てたトピックスの1つがケアマネジャー。介護が始まったら家族とともにプランを考え、伴走する、頼りになる存在です。介護経験者にケアマネジャーについての体験談を語っていただいたのですが、担当してもらっているケアマネさん以外の方と比べる機会がなかっただけに、相性によって随分違うものなんだと知る貴重な機会となりました。お話を伺ったあるご家族は、体重約100キロの父の移乗に困っていたところ、新しく発売された小回りの利く介護ロボットのレンタルをケアマネさんから提案してもらい、負担が激減したとのこと。ケアマネさんが常日頃から情報収集を心がけ、かつ、自分の担当している家族の困りごとが頭に入っているからこそ迅速な提案に至ったのだと思います。母が床に尻もちをついて立ち上がるまでに苦労した経験がある私としては、テクノロジーの進歩によって介護が楽になる未来が絵に描いた餅ではないことを実感して嬉しくなったとともに、知識が豊富で色々と提案してくれるケアマネさんは心強いと改めて思いました。

高齢者を移乗するロボット、Getty Images
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一方で、経験豊富なケアマネさんに母を担当してもらっていたという娘さんからは、本人の意向よりケアマネさん自身の意見が優先されていることに不満を感じていたというお話を伺いました。ご本人が徐々に話せなくなったこともあり、次第にケアマネさんの意向で物事が進むようになってきたとのこと。病院などお母様に携わる方からの客観的助言をもとにケアマネさんを変えてもらったところ、本人の希望をちゃんと聞きとってくれる方となり、お母さんの遠慮や不安もなくなったそうです。ケアマネさんは、プロとして、良かれと思って提案していたと思うのですが、難しいところです。

番組にご出演いただいた介護ジャーナリストの方のお話によると、都会に住む子供が、独自に仕入れた情報を元に離れて住む親の介護に口を出し、ケアマネを交代させてしまうという例が意外と多いそう。親とケアマネさんは良好な関係を築いているにもかかわらず、時々帰って来て、やや的外れな意見をする場合もあると。交代しても、お互いを知る作業をゼロから始めるのは負担ですし、新しいケアマネさんが必ずしも合うとは限らない。交代できるからと次々変えていく家族もいると聞き、ただでさえ多忙なケアマネさんの負担を思い、心が痛みました。

笑顔のケアマネジャー、Getty Images
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根底にあるのは、それぞれの立場からの「元気でいて欲しい」という思いです。私自身も振り返ると、精神的に追い込まれて、知らず知らずのうちに誰かを慮(おもんぱか)る余裕がなくなっていることがあったかもと、何とかしたいという思いが周りを見えなくするという状況は、何となく想像できます。「良かれと思って」の言動は、時に厄介です。だからこそ、これから介護が始まる人には、失敗や後悔の少ない日々を送って欲しい。先日の「あさイチ」で介護の先輩から多くのメッセージが届いたのは、介護経験者の多くがそう思っているからではないでしょうか。介護をしている方々、介護に携わっている方々の日々が少しでも良くなることを願ってやみません。

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