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コマタエの 仕事も介護もなんとかならないかな?

姿見前に数時間なんてことも…母からのお下がり服を通して感じる母娘の絆

駒村多恵さん

タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。普段から母親のお下がりを身に付けることが多い駒村さんが、新聞の取材で「お下がりコーデ」を紹介した時のお話です。

beに掲載

4月の朝日新聞土曜別刷りbe「私のThe Best!」に掲載していただきました。毎週楽しみに拝読しているbeに取材していただけるなんて! 心が躍りました。

さて、何をテーマにしようか。
真っ先に思い浮かんだのは、母の服でした。

体調を崩して目を伏せがちだった母ですが、記事を見て、覚醒度が上がりました
体調を崩して目を伏せがちだった母ですが、記事を見て、覚醒度が上がりました

普段から母のお下がりを着ることが多く、周囲の人にはお馴染みです。特にスタイリストさんたちは、「今日のもお母さんの服? やっぱり! 素敵~」と、すぐに見つけて声をかけて下さいます。母の服を穴の開くように見ては、「こんなの今ないよね!」と丁寧な縫製と細部にこだわったディテールに注目。ボタンも凝ったものが付いているので、ちょっと取れそうになってきたら「早めに外して付け直して! こんなボタン手に入らないから」と、すぐモノを失くしてしまう私に忠告してくれます。

そうやって母の服を楽しんでくださるので、コーディネートの相談をすることもしばしば。母の服と私の服を数着持参し、今っぽくなる着こなしを探ります。昔母が着ていたそのままのコーディネートで着ると、スカート丈がミニ過ぎたり、かっちりし過ぎて見えるので、適度に外すことが多いです。靴をスニーカーに変えたり、ワンピースの下にデニムを履いたり。ブラウジングの仕方や、ボタンを下2つ外すだけでも印象が変わるから面白いです。

母が元気だったころは、このやり取りを家の姿見の前で母としていました。とっかえひっかえしながら、「イヤリングの長さが襟に対して長いから、これじゃない方がいい」とか、「髪の毛が伸びたせいか、前はぶら下がるタイプの方が良かったけど、今はこっちの方がいいんじゃない?」など、私の変化とともに以前組み合わせたコーディネートも覆り、その都度、あーでもないこーでもないと決め直します。「あんたはそそっかしいから、レースひっかけないように気をつけてよ!」などと、まだひっかけていないうちから怒られたりしながら、姿見の前で気づけば数時間。そうやって洋服を通じて私たち母娘はコミュニケーションをとっていたのかもしれません。

今回の取材で何を着ようか、もう少し母が元気だったら一緒に決めたのになと思いながら、一人でクローゼットを見渡します。桜の季節だし、時代は巡って総レースのアイテムが再び流行っているので、総レースのセットアップを。トップスのみ着て、ボトムスは私の手持ちのボーイフレンドデニムにしてみました。イヤリングは先日修理に出したものを。実は、イヤリングのパーツが外れてしまい、デパートのアクセサリー修理コーナーに持参したら、「これは直らないからデザインを変えたらどうか」と提案されたのですが、このデザインを諦めきれず一旦保留に。その後、たまたま「あさイチ」にご出演いただいたアクセサリー作家さんが職人さんを紹介して下さり、元のデザインそのままで綺麗に修理されて戻ってきたのでした。プロに撮影してもらった写真は、どこのブランドのものかと見まがうほど。最高の形で日の目を見て嬉しかったです(beデジタル版のみ掲載)。

金具が外れたイヤリング。一時はツイストタイで留めて使っていましたが、修理してもらえました
金具が外れたイヤリング。一時はツイストタイで留めて使っていましたが、修理してもらえました

ある日、タンスから赤い財布を見つけて、可愛い!と一目ぼれ。がま口を開けてみるとレシートが出てきました。消えかけた文字を目を凝らして読むと「小児科」の文字が。77年の日付です。母は「あんたは体が弱くて病院ばっかりやったわ」とよく言っていましたが、レシートを目の当たりにすると一気に現実味が増します。今は私が病院に連れて行っているからお相子(あいこ)ね、と思いながらレシートを取り出し、使い始めました。ところが、お札入れを広げると、少し亀裂が入っていた部分がどんどん深くなり、もう限界かと思う一方、いや、まだ修理をすれば…との思いが頭をもたげます。そんなことをしているからモノが減らないのはわかっているのですが、やっぱり宝物に思えて、なかなか手放せません。

見つけた母財布と小児科のレシート
見つけた母の財布と小児科のレシート

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