原因はドアノブ!? 閉じ込められたり、迷ったりの迷宮マイホーム
《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
安心なはずの我が家。
けれど、認知症がある僕には、
この小さなマイホームが時々、迷宮になる。
まさか自宅に閉じ込められたり、迷ったりするなんて!!
例えば僕にとっての、この家のトラップは…
家の各所によって違う、
色んな仕様のドアノブ!
回すのか、押すのか、ひくのか。
時々、開けられなくなって、混乱する。
部屋にひとり取り残されたとき、僕は気づいた。
認知症がある人たちは、どこにいたって、
理解されづらい悩みと戦っているんだって。
だから僕は、家族や介護スタッフさんと相談しながら、
自宅に目印をつくる。
道しるべのような目印をつくっておけば、
不安も失敗も小さくなるから。
難しいところは補っていく。
これが僕のいばしょの作り方。
ゴミ箱に用を足していた。
タンスから汚れた下着がでてきた。
認知症がある人の、そんなトイレの失敗を目にした時、
発見した方は目の前に広がる光景のインパクトが強すぎて、
「トイレもできなくなってしまうくらい、わからなくなってしまったのか」と、途方にくれがちです。
けれど、例えば「ドアノブに阻まれてトイレにたどり着けなかったので、ゴミ箱に用を足してしまった」などと経緯を聞けば、
切羽詰まった心身の緊急対応として、おかしなことではないと思えませんか?
ご本人の失敗した理由を知ると、
「それなら私でも、同じことをしてしまうかも…!」と思いなおすものばかり。
アルツハイマー型認知症ですと記憶障害が重なる場合も多いですから、
失敗の原因を、ご本人の口から明確にたどれないかもしれません。
なので普段から周囲が、
形を見分けづらいんだな、
ボタンが押しづらいんだな、
などと、ご本人の困りごとの傾向を観察し、共有しておくと、
いざという時に「もしかしたら原因は…」と予測の目を持ちやすくなります。
安心の道しるべの作り方は、
なかなか一筋縄ではないかもしれませんし、
せっかくつくった目印でさえも、見落としてしまうこともあります。
それでも、本人のできることや可能性を大切にすること。
それこそが、認知症がある人とご家族にとって、
真のいばしょの作り方ではないでしょうか。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》