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コマタエの 仕事も介護もなんとかならないかな?

悪夢再び…移乗中に母がまたも尻もち 手間取る救出に次々現る救世主

駒村多恵さん

タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。移乗が上手くいかず、床に尻もちをついてしまった母親。2度目ということで要領も得ており、順調に持ち上げられると思ったものの、簡単にはいかなかった時のお話です。

二度目の落下

「大変!」悪夢、再びです。

つい数か月前、あんなに苦労したのに、また同じ展開。母を移乗する際、持ち上げている途中で車いすがズルズルと後退し、母は座面からずり落ちて床にドスン。尻もちをついてしまいました。前回母が床に落ちた時は、ベッドへ上げるまでに1時間近くかかりました。あの時は、とにかく慌てて、試行錯誤して、やっとの思いでベッドまであげましたが、冷静に考えると、ブレーキもかけているし、動く理由はなんだろうか…。いや、理由の追及は後回し。まずは母を引き上げなければ。

以前の経験で、段階的に引き上げるのが良いことがわかりました。まず低い高さの踏み台を用意。体の向きを変えてベッドに背中をもたれさせ、ベッドの上に私が乗って、母を後ろから抱えて「せーの!」。掛け声とともにお尻を持ち上げ、踏み台に載せます。さすがに要領がわかっていると早い。非常にスムーズです。しかし、喜んだのも束の間、踏み台からベッド上に持ち上げようとしたら、「あれ?」もう少しのところで持ち上がりません。実は、以前より母の体重が約2キロ増えていました。その2キロが、私に重くのしかかります。

「はあ…上手くいかないな」深いため息が出ます。ひとつ救いなのは、このあと訪問鍼の先生が往診予定。助けてもらえるかもしれない希望があります。ただ、先生の到着は1時間半後の夜7時。その前に、かかりつけ薬局に母の薬を取りに行くつもりでしたが、待ってから母を引き上げると、閉店の夜7時に間に合わなくなります。今晩のお薬がないので絶対に今日中に行かないと。

ひとつ予定が狂うとすべての段取りが崩壊します。
かといって、母を踏み台に載せたままの状態で薬局へ行くのは不安です。踏み台は左右に手すりがないため、体幹保持が出来ない母は、左右、あるいは前に倒れて床に頭を打つ可能性が十分あります。今は私が体を押さえているので座ることが出来ているのです。
どうしよう…。

テーブルの上のスマートフォン、Getty Images
Getty Images

かかりつけ薬局は、配達もしていたはず!と思い立つも、携帯電話は手元になく、隣の部屋のテーブルの上にあります。見えてはいますが、いま、母を押さえている手を一旦離さねば取りに行けません。
往復の所要時間はザっと見積もって約8秒。8秒なら、倒れそうになっても走って抑えられるか。
万が一倒れても頭を打たないように、ベッド上に置いていた、本来は足首を置くためのむくみ防止の足枕を首にはめて、車いすを引き寄せて母の右側に置き、もたれさせ、準備完了。私はそっと母を押さえていた手を外し、母が動かないことを確認して、ダッシュ! 携帯をつかみ、即、母の元へ。姿勢が崩れる前に戻ることができました。

足首を置くために使っている足枕。2個重ねて首にはめて、もし倒れても、頭ではなく、足枕が床に当たるようにして、携帯を取りに行きました
足首を置くために使っている足枕。2個重ねて首にはめて、もし倒れても、頭ではなく、足枕が床に当たるようにして、携帯を取りに行きました

薬局に電話して、配達サービスをお願いしてみました。ところが、配達はあらかじめ決まった家だけに限定しているサービスで、普段配達を利用していない我が家は出来ないと言われてしまい、またもやピンチです。
が、薬局から家まで数分の距離。毎週のように利用しているということ、事情が事情であることを考慮し、支払いは後日、都合の良い時間に薬剤師さんがポスト投函するということで配達を引き受けてくれることになりました。有難い!

母の体を押さえながら1時間半を過ごし、鍼の先生が到着するや否や母の足を持ってもらい、私は上半身をかかえて、「せーの!」。2人で持ち上げると、あっという間にベッドに上がりました。母も安心してベッドに横たわります。Snow Manが大好きな、私よりも小柄な女性の先生もニコニコ。ああ、やっぱりマンパワーが2人だと良いなぁ。
「それにしても、実は私も車椅子が動くの、気になってたんですよね」。鍼の先生の一言で、我に返ります。理由を追及しなければ。

後編に続く

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