母を自宅で介護する父 「特養に」という姉は介護に非協力【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
認知症介護指導者の椎名淳一さんが、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.認知症の母(80代)を父(80代)が介護しています。父は自宅での介護を続けたいというので、なるべくこまめに帰って手伝うようにしていますが、姉は「特養に入れたほうがいい」と言って全然帰ってきません。姉にも協力してほしいです(40代・女性)
A.相談者が自宅で介護を続けたいというお父さんの気持ちを尊重されているのは、お母さんの認知症の進行を考えると素晴らしいことだと思います。認知症の人が自分の安心できるところ以外で生活すると、ショックやストレスなどを抱え、認知症が進行する可能性があるからです。その上で、お父さんの負担も理解し、手伝われているのですね。
そのような状況の中でお姉さんにも協力してほしいというお気持ち、よくわかります。
お姉さんはなぜ、お母さんを特養に入れたほうがいいと考えているのでしょうか。例えば介護の大変さをよく知っているからこそ、お父さんの負担をなくしたいと思っているのかもしれません。あるいはお姉さんの今の状況からして介護を全く手伝うことができないので、特養に入居してもらったほうが安心だと思っているのかもしれませんね。
しかし、もしかしたら前述したような施設入居によるデメリットを知らないかもしれないので、情報を共有することも必要です。
介護を協力してもらえていないと、相談者はつい「お姉さんは何も考えていないのではないか」と疑ってしまい、ストレスを抱えているのではないでしょうか。お姉さんの思いを確認するためにも、まずはお父さんも含めて家族で話し合う時間をつくってほしいと思います。介護保険サービスを利用していて、担当のケアマネジャーがいるのであれば、ぜひ参加してもらってください。認知症の程度などによって可能であれば、お母さんにも話し合いに同席してもらうのもいいでしょう。お姉さんが遠方に住んでいるのであれば、オンライン上で対話する方法もあります。実際にどのくらいの認知症の症状があるのか、またその影響で生活において何が難しいのかを皆で共有しましょう。お姉さんには認知症についての正しい情報も伝えることができるといいですね。
それぞれの意思確認をしつつ、軸になるのはやはりお母さんと同居しているお父さんがどうしたいかということです。自宅での介護を続けたいのであれば、お母さんの意思確認をしっかりしつつ、必要であれば、デイサービスやホームヘルパーなど介護サービスを使い、少しでもお父さんの負担を軽くすることが大事ではないでしょうか。そのうえで、相談者とお姉さんでどの役割を担うのかを決めるといいと思います。例えば相談者はこれまで通りにサポートして、半日がかりになる通院日の付き添いはお姉さんがするなど、できるだけ具体的に役割分担することをおすすめします。お姉さんがどうしても実家に帰って手伝うのが難しい状況であれば、金銭面でのサポートや実家にこまめに電話をかけるなど、何かしらできることはあると思います。
お父さんが体調を崩したり、お母さんの認知症が進行して、お父さんの負担がかなり大きくなってきたときには、お姉さんが言うように施設入居を検討したほうがいい場合もあります。いきなり施設に入居するのではなく、状態に応じてショートステイを利用するなど段階的に進めていけるといいですね。お母さんの状態をよく確認しつつ、相談者とお姉さんとでお父さんの様子もよく確認していくことが大事です。
【まとめ】「特養に入れたほうがいい」と言う姉が、認知症の母の介護を手伝ってくれないときは?
- お父さん、お姉さん、相談者でそれぞれの意思を確認するため、話し合いの時間を設ける。可能であればお母さん、介護保険サービスを利用していればケアマネジャーにも参加してもらう
- お姉さんにお母さんの認知症の状況を知ってもらう
- 相談者とお姉さんとでできるだけ具体的に役割分担をする
- お父さんの様子をよく観察し、状況によっては施設入居を考える
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫