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意外に早く決まった父の特養入居 でも準備ができていません【お悩み相談室】

高齢男性の乗る車椅子を押す女性、Getty Images
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認知症介護指導者の中島健さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.私と2人暮らしの父(79歳)が脳梗塞を起こして要介護3となりました。仕事を続けながらの介護は難しいと判断し、特養に申し込みました。しばらく順番は回ってこないだろうと思っていたところ意外と早く入居できることになり、まだ準備はできていなかったので戸惑っています。(50代・女性)

A.とてもお父さん思いな方だという印象を受けました。お父さんが特養に入ることについて、まだ心の準備ができていないというお気持ちはよくわかります。特養に入るまでになるべくお父さんと一緒に過ごしたり、思い出を作ったりしようと考えていたのではないでしょうか。

ただ、要介護3というと日常生活において全面的に介助が必要な状態で、仕事を続けながらの介護は非常に難しいと思います。また、相談者は準備ができていないということですが、お父さんはどうでしょうか。脳梗塞を起こして体が不自由になった自分を娘が介護してくれているという状況に対して、申し訳ないという思いが強いかもしれません。体が思い通りに動かないストレスから、つい家族にきつい言い方をしてしまい、後悔するというのもよくあるエピソードです。環境が整った特養に入居することで、お父さんはむしろ安心できるのかもしれません。

お父さんと一緒に過ごしたり、思い出を作ったりすることは特養に入ってからもできることです。同居していると一緒に過ごす時間が介護一色になりがちですが、介護をすべてプロに任せれば、面会などで会えるときには純粋に父と娘の関係で時間を過ごせると思うのです。離れて暮らすほうがお互いに優しく接することができ、むしろ心の距離は縮まるかもしれません。それが少し早まったとポジティブに捉えてはいかがでしょうか。

踏ん切りがつかずに今回の入居を見送った場合、次はいつ入居できるかはわかりません。80代になると身体機能の低下が進みやすくなることもあるので、次に入居できるときには自分でできることがさらに少なくなっている可能性が高くなります。介護職は利用者のすべてを介護するわけではなく、環境を整えたうえで、1人でできることはなるべく長くその状態を維持できるようにサポートします。お父さんの身体機能を長く維持するためにも早めに入居すると考えると、決断しやすいかもしれません。

特養に限らず介護サービスを利用することに心を痛めるご家族は、とても多くいらっしゃいます。介護は専門職に任せて、これからお父さんとどんな風に楽しい時間を過ごすのか考え、それを実行することに時間を費やしてほしいと思います。

【まとめ】要介護3の父。思っていた以上に早く特養の順番が回ってきて、戸惑っているときには?

  • お父さん自身は入居したほうが安心して過ごせる、介護をプロに任せたほうが身体機能をなるべく長く維持できるなど、早めの入居をポジティブに捉える。
  • 入居後に一緒に出かけるなど、父と2人で過ごす時間を作る

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫

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