認知症の母がこっそりティッシュを食べるのをやめさせたい【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
認知症介護指導者の中島健さんが、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.認知症の母(83歳)と同居しているのですが、先日中学生の息子が「おばあちゃんがティッシュを食べていて注意したら『食べていない!』と怒鳴られた」と報告してきました。私に見つからないようにこっそり食べるようで、困っています(50代・女性)
A.気になるのは、中学生の息子が相談者のお母さんに対してどのように注意したのかということです。食べてはいけないものを食べていたわけですから、おそらく「それはティッシュだから食べちゃだめだよ」といった言葉で注意したのではないかと思います。それに対してお母さんは「食べていない」と答えていますが、これはごまかしているわけではなく、自分が食べたものをティッシュだと思っていないので、「(ティッシュは)食べていない!」と答えた可能性もあります。もしみかんを食べているのに「それはボールだから食べちゃだめだよ」と言われたら、どうでしょうか。「(ボールは)食べていない!」と反論するのは当然のことです。
認知症の人は、食べ物以外のものを食べてしまう「異食」をすることがあります。お母さんの場合も認知症によって、目の前のティッシュを食べ物だと誤って認識し、食べてしまっていると考えられます。食べている途中で注意をすると慌てて飲み込もうとすることがあり、それによってのどに詰まらせたら非常に危険です。
そこでおすすめなのが、お母さんがティッシュを食べているのを見つけたら「それおいしい? 自分にもちょうだい」と言って、まず本人からティッシュを遠ざけることです。そして「あっ、これティッシュだったよ」と言って一緒に笑い合えればいいのです。
そのうえで、今後はティッシュをお母さんの目につくところに置かないようにしましょう。ティッシュを置いていた場所には、つまめるようなおやつを置いておくといいと思います。鼻をかむとき、汚れを拭き取るときには、ティッシュを渡して、行動によってティッシュを正しく認識してもらうように働きかけるのも1つの方法です。また、箱型のティッシュではなくポケットティッシュを渡しておけば、ケースの形態が異なるので、間違えない可能性もあります。
認知症の人が見ている世界を中学生の息子も含めて家族で理解し、適切な対応について共有できるといいですね。
【まとめ】認知症の母がティッシュを食べてしまうときには?
- 注意をするのではなく、見つけた人が「それおいしい? 自分にもちょうだい」と言ってお母さんからティッシュを遠ざける
- お母さんの目に入る場所にティッシュを置かない。ティッシュを置いていた場所には食べ物を置く
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫