「怖い」と思っていた介護の世界 飛び込んでみて知った命の輝き
《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》

普段、私は会社勤めのエンジニアだ。
そんな私が無謀にも、
週1回、介護施設に勤め始めた。
どんな世界がそこに広がっているのか、
怖いけれど知りたかったから。
仕事は介護スタッフさんの補助だけど、緊張の連続だ。
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はじめて見る、老いていく人の最期。
はじめて見る、他人の排泄(はいせつ)物。
はじめは見るのが、怖かった。
けれど、なにも怖くないし、
ただそこには、人の自然な姿があった。
——知らないから、私は怖かったんだ。
まさか私がこんな感情になるなんて、
この世界に飛び込むまでは、思いもしなかった。
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「ありがとう」と言われて、振りかえる。
「私こそ、ありがとうございます」とお返しする。
私が怖いと思っていたものは、
実は、命のかがやき、そのものだった。
介護施設に勤務しはじめた知人から、
高齢者の方の命のかがやきの話を聞いたとき、
私は、はっ!とさせられました。
なぜなら最近私は、介護職の素晴らしさより、
厳しさにばかり、目が向いていたからです。
私も数年前までは20年近く介護福祉士として勤務し、
他の仕事では味わえない充実感を日々、感じていたというのに…。
なのになぜ今は介護職を、
必要以上に暗いものとして感じていたのか。
その厳しさを伝える、ニュースやSNSも一因でしょう。
確かにそれも現実で、大切な情報です。
けれど、1年近く勤めあげたこの知人の目は明るく、
今では、本格的な介護スタッフになるために学んでいます。
「介護職って、素晴らしい仕事なんですね」
何度もそう、繰り返していました。
知人が、実際を経験したからこそ伝えられるこの現状も、
介護職の現実のひとつ、なのではないでしょうか。
少しずつではありますが、年々、処遇改善もなされている介護業界。
その職務ならではの輝きを、
これからも見つけていこうと思います。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
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