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コマタエの 仕事も介護もなんとかならないかな?

花嫁から両親への感謝の手紙を聞きながら、司会ブースでハッとしたこと

駒村多恵さん

タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。どんな些細なことでも、日頃からお母さんに感謝の気持ちを伝えるようになった駒村さん。今回は、そのきっかけについてのお話です。

魔法の言葉

今年は、お正月以降も我が家のバラが次々と咲いています。例年と季節の移ろいが随分違うことを感じながらも、ピンク色の花びらの華やかさと可憐さに顔がほころび、香りに癒され、力強く花が開く様に生命力を感じます。その懸命に生きるさまをつい母に重ね合わせ、花が元気だと母も元気でいる気がして、寒がりの身体に鞭を打ち、ちゃんちゃんこに身を包み、まだ暗いベランダに出て、寒い朝も水やりに励んでいます。こうやって花を咲かせてくれると嬉しいもので、気持ちとしては、「咲いた」ではなく、「咲いてくれた」という思いです。

いつの頃からか、私は一日の終わりに、「今日も元気でいてくれてありがとう」と母に伝えるようになりました。デイサービスから帰ってきたら、「元気で帰ってきてくれてありがとう」。食べ終わったら「しっかり食べてくれてありがとう」。今ある命が当たり前じゃないこと、出来ることが当たり前ではなくなっていくことを、介護度が進むとともに実感するようになったからかもしれません。

大輪の花をつけたバラ。眺めるたびに顔がほころびます
大輪の花をつけたバラ。眺めるたびに顔がほころびます

大きなきっかけは、久しぶりに司会をした知人の結婚式でした。順調に式が進み、結婚式のクライマックス。花嫁が、日頃なかなか伝えられない両親への感謝の気持ちを手紙にしたため、こらえる涙を抑えきれずに読んでいるのを司会ブースから眺めていたとき、ふと、結婚式の予定のない私は、いつ母に感謝を伝えるのだろうか?と思ったのです。その時、母はまだ要介護1だったと思いますが、このまま介護度は進んでいくであろうと感じていた頃でした。友人の結婚式の司会をしていた20代の頃には、何度同じシーンを見ても思い浮かばなかった疑問です。これは早いうちに伝えておくべきだと思い立ち、帰宅して早速、「これまで育ててくれてありがとう」と母に伝えました。すると、母の目から大粒の涙がポロリ、ポロリと流れ落ち、こんなにも喜んでくれるのかと驚きました。と同時に、「間に合った」と。今気づかなかったら伝え損ねていたかもしれないと、心の底から、今伝えてよかったと思いました。

咲き誇るバラの一方で、室内で育てているシクラメンは、クリスマス前からどんどん茶色くなり、調子を崩して見るたびに心配しています
咲き誇るバラの一方で、室内で育てているシクラメンは、クリスマス前からどんどん茶色くなり、調子を崩して見るたびに心配しています

それ以来、思っていることは、ちゃんと言葉にして伝えようと改めました。中でも「ありがとう」は頻出フレーズです。例えば移乗。トイレ介助、ベッドから車いすに乗り移るときなど、母が立ち上がる度に私が支えるのですが、調子の良し悪しによって私の負担は大きく変わります。調子がよいと、立ち上がる瞬間以外はさほど支えなくても良いこともあるのですが、悪い時は全体重が私にのしかか り、とてつもなく重いのです。そのどちらにも「ありがとう」を使います。足に体重が乗った時は「今のいい感じ! しっかり立ってくれたから楽(らく)できたわ。ありがとう」。そんなふうに伝えると、母はちょっと嬉しそうだったりドヤ顔をしたり。逆に調子の悪い日は「今日は重かったなぁ、しんどかったわ。まあ、こんな日もあるよな、頑張ってくれてありがとう。また次頑張ろう!」と。実際、介助する側が「しんどい」と感じているのに、その気持ちを胸にしまい込むのは介助者のストレスになりかねません。ただ、本人が頑張って立とうとしたことも事実。ダメだったという結果で母が落ち込まないような声掛けをすれば、悲しい顔をした後も、うんうん、と頷き、徐々に次頑張ろうという表情に変わっていきます。

ランチバッグで育てているいちご。1月に実をつけ始めました
ランチバッグで育てているいちご。1月に実をつけ始めました

私は言葉の伝え方で介護は随分変わると思っています。中でも「ありがとう」は魔法の言葉。頑張ってくれたことに「ありがとう」とその都度伝えると、ポジティブな感情が増え、なんとなくですが、穏やかな精神状態になるような気がしています。恥ずかしくて言えないという方もいらっしゃるかもしれませんが、だまされたと思って試してみてください。何といってもタダですから!

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