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コマタエの 仕事も介護もなんとかならないかな?

講演会の準備で振り返る 母と私の楽しい思い出いっぱいの介護15年

駒村多恵さん

タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。今回は、仕事をしながら介護をする日常についての、講演会を行ったときのお話です。

講演会

「駒村さんに介護の話を聞きたいって人がいるんだけど…」
最近、知人や、知人の知人という方から介護について話を聞かせて欲しいと言われることが増えていました。そんな矢先、講演会の依頼を受け、仕事をしながら介護をする私の日常をお話しさせていただくことになりました。時間は90分。普段、NHK「あさイチ」の担当コーナーでは持ち時間15分で動いている私。結構な長さに少し不安になり、インスタグラムで質問を募集したりして、皆さんがどんなことを聞きたいと思っているのか想像しながらパワーポイントの枚数も多めに作ろうと取りかかりました。

家族を介護されている方や、ケアマネジャーの方のほか、多種多様な方がお越しくださいました
家族を介護されている方や、ケアマネジャーの方のほか、多種多様な方がお越しくださいました

古いハードディスクを開きながら記憶を辿ります。が、私は整理整頓が大の苦手。どこに何の写真が入っているのか探すのにひと苦労。そもそも、この話をしようと思う出来事がいつのことだか記憶が曖昧です。西暦と日付のフォルダを一つ一つ開き、この出来事よりあの出来事は、先だったか後だったか、全然思い出せず、頭を抱えました。

介護が始まってからの変遷は、15年も経つと、うろ覚えのところも多くなります。デスクワークも苦手な私は、外付けハードディスクを一度開いたら閉じられない事態になり、写真にモザイクをかけようとするも上手くいかず、一度携帯に写真をメールで送信し、アプリを使ってモザイクをかけ、携帯で開いたパワーポイントに貼り付けるという、きっともっと良い方法があるに違いないと思うまわり道を何度も繰り返しました。全然進まない!

悪戦苦闘しながらも資料を作っていると、徐々に、要介護度の段階によって工夫することを変えていたことなどが思い出されました。あの時慌てふためいたことは、今思えば大したことではなかったり、あの時まだ大丈夫と流していたことは、実はものすごく重要な局面だったんじゃないかと、時を巻き戻したいと思ったり。その時、その時で「大変!」と思っては次に何ができるか考えていたなと、客観的に振り返る機会にもなりました。そして、もう、これらの写真の中の元気な母には会えないんだなという淋しさも。年を追うごとに目に見えて弱っていく母を目の当たりにして、どの時期も精いっぱい介護してきたと自負してはいますが、どんなに頑張っても衰えてしまう抗えない現実を改めて直視させられた気もしました。

ただ、整理しきれないほど撮っていた写真のなかでは、母の可愛い笑顔がたくさんあって、介護が始まっても楽しい思い出はたくさん作れるし、その一つ一つの体験が私と母を豊かにし、今の穏やかな日々につながっているに違いないとも感じました。そして、その一端を講演会でお伝えしようと、せっせと写真を携帯に送信しました。きっとこの作業は無駄に違いないと思いながら。

会場の大阪市社会福祉研修・情報センターでは、お風呂介助の実習室や介護関連の図書ばかり集めた図書館が常設であり、当日は、車椅子などの福祉用具を試せるイベントもありました
会場の大阪市社会福祉研修・情報センターでは、お風呂介助の実習室や介護関連の図書ばかり集めた図書館が常設であり、当日は、車椅子などの福祉用具を試せるイベントもありました

講演会当日。あまり見る機会がないであろう、嚥下外来の受診の様子を収めた動画や介護食の写真などを交え、機能維持のためにしていることや効率よく仕事と両立するための私の工夫をお伝えしていたら、思っていたよりも90分はあっという間で、最後の10枚くらいのパワーポイントは1分強で駆け抜けるという、普段の生放送と同じような帳尻合わせの展開に。しかし、講演後、「もっと多く人に聞いてもらいたい」という声もいただき、頑張ってパワーポイントを作ってよかった!とホッとしました。こんな介護があるのかと思ってもらえたり、少しでも参考になるところがあれば尚よいなと。介護は人それぞれ。私自身もアップデートしながら、良い情報はどんどんシェアして、出来るところまで、私なりの在宅介護を続けられたらなと思っています。

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