ここにも高齢者施設が… 検索サイト頼みで見落としていた重要な情報源とは
いつかはやってくると思いつつ、ついつい先送りしてしまう親の介護の準備。関西在住のイラストレーター&ライターのあま子さんもそんな一人。これまで一人暮らしを続けていた母が、2022年正月早々に転倒。骨折→入院という経緯で認知症を発症。姉と兄による“介護押しつけバトル”を経て、いったん母は首都圏に住む兄一家のところで暮らすことになったのですが、あっという間に関西に戻ってくることになりました。母の住まい探しも再開です。
首都圏の兄宅から母は「いつ帰れる?」と電話で毎日訴えてきました。このため私もあせってはいましたが、どこでもいいというわけにもいきません。少しでも母が快適に暮らせる老人ホームを探すべく、複数の老人ホーム検索サイトをチェックするのが、私の日課となっていました。そのなかでつかんだ住まい検索のポイントについてお話しします。
まず、おさえておきたいのは、民間の検索サイトは地域の施設を網羅しているわけではないということ。考えてみれば、グルメサイトだって、契約しているお店のなかから情報を提供しているわけで、老人ホームの検索サイトも同様なのでしょう。Aの検索サイトで出てこなかった施設が、Bの検索サイトで出てくることもあります。私の場合は、グーグルマップで自宅周辺の高齢者施設をチェックして見つけたり、自転車で近所を走っているときに見つけたりもしました。そこでわかってきたのは、ホームページに力をいれておらず、通り一遍の検索ではひっかかってこない老人ホームもあるということ。私の印象では、古くからの施設で、建物の入り口にチラシなどはあるものの、新規受け入れにあまり力を入れていないところが多いように思いました。
地域の老人ホームをもれなく知るにはどうしたらいいのだろうとあれこれ試したあげく、ものすごく基本的な情報を見落としていたことに気づきました。自治体のホームページです。多くの自治体では地域の老人ホームの一覧を掲載しています。自治体のホームページから見つけにくい場合は「○○市 老人ホーム一覧」「○○市 特別養護老人ホーム一覧」などでググると見つかります。高齢介護課などの窓口でも教えてくれるはず。ただし、自治体の一覧でわかるのは事業者名や住所など最低限の情報。詳細については、個々の施設のホームページや、老人ホーム検索サイトを使って調べる必要があります。私の住むA市の「老人ホーム一覧」には、なんと!開設予定の老人ホームの一覧もついていました。1年以上先の予定まで載っており、個人で得られる施設情報としてはおそらく一番早いのではないでしょうか。A市のように開設予定が掲載されていなくても「老人ホーム 建設予定 〇〇市」などで調べると、思わぬ情報をゲットできるかもしれません。
見学5:2022年12月 B市のサービス付き高齢者住宅
今回訪問したサービス付き高齢者向け住宅はネット検索で見つけたのですが、ケアマネさんからも「担当した方が入居して、とてもよろこんでいる」とおススメされた施設です。わが家から1km程度の距離で、オープンして数カ月。新規オープンの施設は、入居しやすいのはもちろん、「3階がいい」や「端の部屋がいい」など居室も選びやすい。入居者が全員初対面なので、母のように引っ込み思案でも、人間関係がつくりやすいなどのメリットがあります。また、サ高住でありながら「24時間看護体制」があるというのも魅力でした。
- <施設情報>
- ●敷金:10万円
●1カ月の料金:家賃、共益費(水道光熱費込み)、食費、生活相談費あわせて約14万円+介護保険利用料+電気代、医療費、生活消耗品代など約6万円
●部屋:個室約18.00㎡ トイレ・洗面台・収納スペース・エアコン・緊急通報装置(ナースコール)
●食事:施設内で調理
●人員配置:夜間?人
●特徴:24時間の看護体制。施設内に訪問看護ステーションあり
看護に手厚いサービス付き高齢者向け住宅は母に最適?
外観は2階建ての落ち着いたたたずまいの建物。すぐそばに高速道路と幹線道路があり、環境はよいとはいえません。余談ですが、このあたりは土地が安いのか、近隣にいくつか老人ホームがあります。
出迎えてくれたのはさわやかな30代とおぼしき男性です。入り口付近の廊下で何人ものスタッフとすれ違いましたが、全員笑顔であいさつをしてくださり、スタッフ教育が行き届いているんだなーと思いました。入居者の方への声かけも丁寧で、入って数分で好ポイント連発です。これまで見学した施設と同様、個室に案内され、施設の説明を受けました。施設の運営会社は、訪問看護を経営しているので、看護体制が手厚いのがウリ。サ高住では珍しい24時間看護対応で、施設内には訪問看護ステーションがありました。母は90歳と高齢のうえ、高血圧や誤嚥(ごえん)などの心配もあるので、看護師が常駐してくれるのは心強いものがあります。ここまではいいことずくめでしたが、シビアな話もありました。一例をあげると、料金体系の話で、寝具やおむつ、日用品などをセットでレンタルするシステム。これは強制ではないのですが、申し込まないと、シーツなどの交換・洗濯などが行われず、共用部分のトイレットペーパーなどが使えません。このシステムによって、書かれていた月額料金から16,000円ほどアップします。こういう細かい料金体系はネットには載っておらず、見学して初めてわかる部分です。予算的にけっこうキツイ…。また、訪問した当時はコロナ禍だったこともあり面会・外出は禁止されていたこともネックでした。私としては、母がさみしくないように、頻繁に会って話したり、近所を散歩したりしたいと思っています。こちらの施設は「日常的に介護・医療行為が必要になった方に最適」とのことで、入居者も要介護度の高い人が多く、認知症とはいえ元気な母にはしんどい気がしました。病院と勘違いして「私、なんで入院するの?」とか言いそう…。母の状態を聞いた先方も、合わないと思われたようで、今後ほかの施設と比較できるようにと内部を案内してくださいました。とことん親切。丁重にお礼を言って見学を終了しました。
【感想&後日談】
サ高住といえば、「比較的元気な高齢者が入る施設で、看護師はいない」というイメージですが、今回のように医療行為が必要な人でも入れる24時間看護師のいる施設も探せばあります。見学のあと、情報をくれたケアマネさんに、入居された方の介護状態を聞くと「要介護5でほぼ寝たきり」とのこと。母とは状態がちがいすぎる。もっと丁寧にヒアリングするべきでした。要介護度重めの方にはとてもよい施設だと私も思います。前回の自由度の高いサ高住と、今回のサ高住を見学して、同じサ高住でも随分と異なるということ。そして施設選びは入居する人の状態と施設の性格が合っていることが大切なんだと実感しました。適度に自由で、適度にケアがあり、予算内におさまって…。難しすぎる。母の住まい探しはまだまだ続きます(泣)。