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今日は晴天、ぼけ日和

生きがいだもの 両手を振って元気に歩く 「徘徊」の言葉にへこたれない

《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》

歩くひと

私の生きがいは、歩くこと。

人生百年!と60歳を過ぎた頃から、
ほぼ毎日、歩いているの。

認知症もある私だけれど、
迷わないように工夫を重ねながら、
元気に歩いている。

「あれは徘徊?」と言われるひと

でも時々、私の症状を知っている人が、
悪気なく話しているのが聞こえてくる。

「あれは、徘徊(はいかい)?」と。

そんなとき私は、聞こえないふりをして、
大きく両手を振って、歩く。

こんなことで、へこたれないの。

「あら」「こんにちは」

私は、歩く。

迷うこともある道のりを、元気に歩く。

この道の先にきっと、
手をとりあえる誰かがいるって、
信じているから。

「認知症があるAさんがひとりで歩いていたけれど、あれが徘徊なのね」

先日、知人からそんな話を伺い、言葉を失いました。

なぜなら、
「認知症がある人が歩いている」

ただそれだけで、徘徊と思われてしまうなんて……と、
つい、がっくりきてしまったのです。

でも認知症がある人と実際に関わりがなければ、
極端な見方になってしまっても当然かもしれません。

認知症がある人を正しく理解するためには、
ご本人が症状だけに動かされているわけではない、ということを、

知ることが、大切だと思います。

風邪をひいた人が寝込んだとしても、
本人そのものは変わらないのと一緒です。

なかには前頭側頭型認知症のように、
性格の変化が見られることもありますが、それはその人の一部で、
あくまでも目の前のその人は、
「認知症の人」ではなく、「認知症もある人」なのです。

また今回、マンガで参考にさせていただいた方の行動は、
いわゆる徘徊ではありません。
 
本来、徘徊とは「目的なくうろうろ歩く」という意味です。
その言葉は、認知症がある人の外出は危険という偏見や差別を助長しかねません。

けれど、徘徊のように見えても本当は、認知症がある人にも歩く目的や理由があるのです。

このため、近年は、徘徊という言葉を「一人歩き」といった言葉に言い換えるようになってきています。


2025年には、65歳以上の高齢者の約5人に1人が、認知症になると予想されている日本。

新しい世の中に向けて、
私たちが視点をリニューアルしていくことが、
今年も試されています。

 

 

《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》

前回の作品を見る

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