詐欺被害にあい引きこもる父 元気を取り戻してほしい【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
東京都認知症介護指導者でデイサービススタッフの坂本孝輔さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.母と2人暮らしの父(78歳)は活動的で、スマホやパソコンも使いこなします。ところが先日電子マネーを利用した詐欺被害にあってしまいました。被害額は大きくないのですが、すっかり落ち込んで引きこもりがちです。どうしたら元気を取り戻してくれるでしょうか(49歳・男性)
A.落ち込むのは当然だと思います。ましてやパソコンやスマホは得意分野だったと思うので、ショックは大きいでしょう。まず落ち込んでいるお父さんに共感を示しつつ、詐欺被害にあった原因はお父さんのミスではなく、最近の詐欺の手口が巧妙になっているせいだと伝えられるといいですね。パソコンやスマホを使用していて代金の決済が必要になったときは、家族も一緒に確認するようにしよう、など今後の対策につなげられると今回の経験を肯定的に捉えやすくなると思います。
お父さんは詐欺被害にあったことでパソコンやスマホを使うのが怖くなっている状態かもしれませんが、これらは大事なコミュニケーションツールでもあるので、ぜひ継続して使ってほしいですよね。例えば写真データの整理や表の作成など、お父さんのスキルの範囲で依頼できそうなことがあれば、頼んでみるといいかもしれません。頼られていると感じられれば、自信を取り戻せるのではないでしょうか。
また世代を超えた交流ができるのもパソコンやスマホのいいところです。ゲームやアプリはオンライン上でできる場合もあるので、孫や子どもと一緒に楽しめれば、家族での話題も増えますし、元気を取り戻せるのではないかと思います。
心配なのは、お父さんの判断力が落ちているために被害にあった可能性も考えられることです。詐欺被害にあった経緯を聞いてみて、例えばどういったメールが送られてきて、それに対してどのような対応をしたのかといったことを詳しく話せるようであれば、問題ないと思います。一方説明や記憶があいまいだった場合は心配です。今後もより気を付けてお父さんのことを見ていく必要がありますし、ほかにも認知機能の低下を疑うような場面があれば、認知症を疑ってこの機会に受診を促すのも1つの方法です。
高齢になると自信を失ってしまう場面は増えやすいので、家族の力でお父さんの元気を取り戻せるといいですね。
【まとめ】詐欺被害にあって落ち込む父。元気を取り戻してもらうには?
- 詐欺被害にあった原因をお父さんのミスではなく、加害者側の巧妙な手口のせいにする
- パソコンやスマホを使ってできる作業を依頼する、あるいは孫や子どもとゲームやアプリを一緒に楽しんでもらうといったことで、お父さんに自信を取り戻してもらい、パソコンやスマホを継続して使用してもらう
- 詐欺被害にあった経緯を詳しく聞き、判断力が低下していないかどうかを確認する
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫