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50代が自由に使えるお金は月1万~3万円 そんな「バブル世代」のライフスタイルは「チャレンジ」「社会との接点」「働くけど生活も楽しむ」欲張り世代【インサイト調査・50代の特徴編】

2023年6~7月実施のインタビューから抜粋、無断転載厳禁

「project50s」が50代にフューチャーしたインサイト調査を実施したところ、50代の特徴が見えてきました。50代~60代前半の人たちへのインタビューとアンケートを組み合わせたインサイト調査をもとに考察してみました。連載1回目は、「50代の特徴編」です。価値観やライフスタイルに大きな影響を及ぼす10代後半から20代を「バブル時代」に過ごした50代半ばから60代前半には、「『シニア』と呼ばれたくない」、「社会とかかわり続けていたい」、「自分にとって価値あるものにはお金を惜しまない」、「チャレンジし続けたい」といった、「欲張り世代」ともいえる新しい50代からの生き方が見えてきました。

浮かれた好景気だけでなく、どん底も20代で経験した世代

インタビューに協力していただいた方たちからよく聞かれたのは、自分たちの世代を「バブル世代」と自称・自認している点です。

ここでいう「バブル世代」とは、1986年11月から1991年2月の景気が上昇していく時代に、学生時代や20代を過ごした世代です。円高、株価上昇の時代です。これはライフスタイルにも影響を与えています。

今年60歳になった兵庫県の女性は、夫婦で同じ会社に勤務してきましたが、50歳でライフスタイルを見直しました。

「私たち夫婦は、バブル景気のときも、バブル崩壊や落ち込んだときも知っています。50歳のころ、世の中不況で、勤務していた会社の業界もどん底で職場もギスギスしていました。その職場を辞めたくなりました。ライフスタイルを見直し、エクセルで収入、貯金、支出を表にしてみました。ここで私が専業主婦になると老後の資金が足りないことが分かりました。55歳のとき、フィナンシャルプランナー(FP)に相談し、5回面談して、『これなら辞めても大丈夫でしょう』とアドバイスを受けたので、58歳で退職しました」

この女性の「バブル景気のときも、バブル崩壊や落ち込んだときも知っています」という言葉にあるように、浮き沈みを体感している点です。就活は売り手市場でも、大手企業に就職したとしても、20代でリストラを経験している人が少なくありません。

Getty Images

猛烈に働くだけでなく、食べて、寝て、遊んでもいた世代

今の時代は、働き方改革によりワークライフバランスが重要視される時代ですが、当時は「24時間戦えますか」というフレーズのCMが話題になっていました。24時間は極端ですが、よく働き、よく遊んだ人たちが多い世代とはいえるでしょう。

1988年に発売された日産の自動車「セフィーロ」(1988年発売開始)のキャッチコピーは「くうねるあそぶ」。若い世代のライフスタイルに車が欠かせなかった時代です。「食べる」「寝る」「遊ぶ」といったライフシーンにフィットする商品が世に出て行き、市場を獲得していきました。つまり、単に働き過ぎ世代とかたづけてしまうのは尚早です。

その日産は2023年3月24日、現代の「くうねるあそぶ」を表現したプロトタイプセダン「コンテンポラリー ライフスタイル ビークル」を公開しています。人口ピラミッドの変化を意識してなのか、CMに2015年からロックミュージシャンの矢沢永吉さんを、2020年からは元SMAPの木村拓也さんをそれぞれ起用しています。この2人が語る「やっちゃえ NISSAN」というフレーズを聴いていると、アラフィフ、50代の人たちの胸に響きます。「やっちゃえ 50代」と自動変換された人は少なくないでしょう。

円高が追い風になり、自分の知らない世界をパッケージ旅行でなくバックパッカーで自由に旅をして異文化を吸収していった世代でもあります。

千葉県の60代の女性は、学生時代、43カ国を旅したそうです。

「苦学生の時代、海外を自由気ままに旅していました。あのときのように、電車で移動し、着いた街のインフォメーションセンターで宿を予約し、街を巡る旅をしたいのが望みです。ただ、最近、体力低下に抗しきれず、快適なホテルに連泊し、旅程ものんびり、あまり歩き回らないようになってきています」

若い世代の音楽や演劇、海外旅行などさまざまなカルチャーが花開いた時期でもあり、それを夜や休みに謳歌していました。現在のようにスマートフォンによるサブスクで音楽を聴くことはできませんでしたが、ウォークマンの登場や小型化で、移動時間や待ち時間といったすき間時間に音楽が幅をきかせていく時代に変化した第一世代ともいえます。80年代のJ-POPやJ-ROCKの隆盛を後押しした技術です。

アンケートで「好きなミュージシャン」について自由回答を求めたところ、下記のような名前が挙がってきました。

1位 中島みゆき
2位 松任谷由実
3位 サザンオールスターズ(桑田佳祐)
4位 竹内まりや
4位 小田和正(オフコース)
6位 山下達郎

2023年5月実施のインサイト調査(アンケート)から抜粋、無断転載厳禁

「女性の定年クライシス」世代

この世代は1985年に制定された「男女雇用機会均等法」の第一世代ともいえます。アンケートでは、50代でも共働きしている人が多いことが分かりました。ただ、50代に至る過程で、結婚によっていったん退職したか、それともそのまま勤め続けてきたかで、課題は分かれます。特に後者は、「女性の定年クライシス」がフォーカスされる初めての世代と表現した人もいました。

2023年5月実施のインサイト調査(アンケート)から抜粋、無断転載厳禁

自由に使えるお金の中に見えてくる「50代のこと消費」

今回のアンケートの50代の有効回答者の82.7%が働いていました。男女の区別なく、共働き世代を裏付けています。

こうした中で、「1カ月に自由に使えるお金」で、50代で一番多かったのは、「1万円以上2万円未満」「2万円以上3万円未満」でした。消費行動はこの範囲内で行われます。「バブル世代」は、「価値がある」と自分が感じた「もの」「こと」の消費には惜しみなくお金と時間を使う世代ですが、日常生活においてはカジュアルが定着しているといえます。この自由に使えるお金の使途には、自宅と職場以外のサードプレイスで活動している人も多く、これらに使うことも含まれます。50代の「こと消費」の特徴ともいえます。

ただ、3番目に多かったのは「10万円以上」でした。これは60代でも類似のトレンドが見られました。インタビューを含めて分析すると、やはり共働き世代の中でも2人とも正社員として働き続けている人、士業の人、起業した人などというトレンドが見えてきました。

2023年5月実施のインサイト調査(アンケート)から抜粋、無断転載厳禁

がん、更年期障害、介護といった転機と隣り合わせの世代

こうしたインサイト調査で注意しなくてはいけないのが、ペルソナは1つではないということです。

ライフイベントの中には、がん、更年期障害といった病気の発症、親の介護といった出来事があります。バリバリに働き続けてこられた人だけではないということです。

また、価値観の違いとして捉える人もいます。

東京都の50代の女性は、50代や60代を「境界世代」と表現しました。

「価値観が半々に分かれていると思います。例えば、私はお墓はいらないと考えています。その前の世代の『土の世代』から『風の世代』に移ってきています」

次回からは、インサイト調査の各論として個別の切り口で50代を分析していきます。

project50s インサイト調査とは

このインサイト調査は、朝日新聞社の「project50s」が実施しました。質問のジャンルは、「ウェルビーイング」「ソーシャルグッド」「ライフシフト」「ライフスタイル」「家族関係」「お金」「住まい」といったテーマで、みなさんが何に関心を持ち、何に時間を費やし、何に幸福感を得ているのかといったことなどについて、約60問(選択式、記述式含む)についてお聞きしています。

調査は、2023年5月2日~5月28日で、インターネットを通じて、主に40代、50代、60代の人たちを対象に行い、497人から回答を得ました。そのうち、50代は243人、60代は175人、40代は71人でした。男性は217人、女性が268人で、「その他」「答えたくない」という人は12人でした。回答者の職業をみると、男性も女性も仕事をしていることが分かります。

このシリーズ「project50sインサイト調査」では、「50代の人」の調査結果を隣接する世代と比較または50代の中での比較とともに、追加でご協力いただいた26人の人たちへのインタビューの結果も含め、アラフィフや50代のインサイトを読み解いていきます。

企画・分析・執筆 岩崎 賢一(いわさき・けんいち)
朝日新聞社 シニア事業部 メディアプランナー

朝日新聞社入社後、くらし編集部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部、オピニオン編集部などで記者、及び弊社の「apital」「withnews」「論座」「telling,」など各種webサイトのエディターを経て、現在は「なかまぁる」をベースにミドル・シニア領域で活動。各種webサイトで主に医療や介護の政策と現場をつなぐ記事や暮らしの現場から社会や経済を分析する記事、ストーリー性のある記事を執筆。現在も毎年、数十人のデプスインタビューや関係者のインタビューを繰り返している。これらの知見をベースにwebコンテンツの企画制作や50代を中心としたミドル・シニア世代のインサイト調査をベースにしたコミュニケーションプランの作成や市場分析によるコンサルティングを実施(担当)している。2012年、「プロメテウスの罠」(「病院、奮戦す」担当)で日本新聞協会賞受賞、2015年5月、ドキュメンタリー番組「県境が分けた 置き去りにされた宮城県丸森町筆甫~」でギャラクシー賞奨励賞受賞。

*インサイト調査のサマリーは下記のインフォグラフをクリックしてください

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