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やたらと物が増えたと思ったら…父のTV通販に困っています【お悩み相談室】

テレビを見る高齢男性、Getty Images
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東京都認知症介護指導者でデイサービススタッフの坂本孝輔さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。

Q.近所で一人暮らしをする父(82歳)は、テレビで野球中継を見るのが唯一の趣味です。数カ月前から実家にやたらとものが増えていると思っていたら、CMのテレビショッピングで毎回買い物をしているようなのです。テレビを見せないわけにもいかず、困っています(59歳・女性)

A.高齢の方がやたらと買い込んでしまうのは、いくつかの理由が考えられます。まずは買い込んでいることを本人がどう感じているのか、確認してみてください。本当に必要なものを買っているのか、余計に買ってしまったという自覚はあるのか、買ったこと自体を忘れているのか。

余計に買ってしまったという自覚があるのなら、さみしさやあり余る時間を埋めるために買い物をしているのかもしれません。テレビショッピングの場合は、電話やネットで注文して商品が届くのを待ち、届いたら開封するという作業が発生します。ものを手に入れるために作業をしたという実感があると、心が満たされたようになることがあるのです。

こうしたケースでは、人との関わりを増やしたり、予定を入れたりすることが効果的です。地域の高齢者サロンやボランティアに参加するほか、家族と一緒に買い物に行ったり料理をしたりする時間をつくるのでもいいと思います。定期的な予定があると、その日だけではなく、予定に向けて準備をすると思うので、自然と時間が埋まっていきます。例えば毎週土曜日は相談者家族が来るといった予定があれば、そのために部屋を片づけるかもしれませんし、「〇〇を作るから食材を買っておいて」と頼んでおけば役割もできます。暇な時間がなくなってくると、余計なものを買う頻度も減るのではないでしょうか。

一方、買い物したことを忘れているようなら、認知症の可能性があるので一度受診することをおすすめします。記憶障害によって買ったことを忘れて、何度も同じものを買ってしまう場合もありますし、欲求を抑える脳の機能が低下していることによって、欲しいと思ったら何でも買ってしまうといったことも考えられます。また、見当識障害による可能性もあります。私たち日本人は清潔を好むため、高齢の認知症の方は「ティッシュペーパー」などの紙に執着する傾向があります。紙がなくなることへの不安が強く、トイレットペーパーやティッシュペーパーを買い込んでしまうことがあります。見当識障害によって過去と現在の区別がつかなくなっていることや今の在庫で何日くらいもつかといった見当がつかなくなっていることが考えられます。

ある認知症の方で近所のスーパーに1日3回刺身を買いに行くという方がいました。ご家族は困っているとのことでしたが、「スーパーを歩いて往復する」「店員と会話をする」「商品を選ぶ」「代金を払う」という行為を1日3回もしているということは、それだけでデイサービスに行ったような活動量になります。デイサービスも利用料はかかるわけですから、ホームヘルパーや家族が消費期限をチェックするなど管理できる状況で経済的に問題がなければ、デイサービスに行っていると思って無理にやめさせることはないのではないかとご家族にお伝えしました。

経済的な問題などによって余計に買うことをやめさせたいということであれば、やはりデイサービスやホームヘルパーを利用して、予定をつくるということが大事だと思います。

まずはお父さんの様子や受診によって、やたらと買い物をしてしまう理由を見つけられるといいですね。

【まとめ】一人暮らしの父がテレビショッピングを見るたびに買い物をしているときには?

  • やたらと買い物をすることに対して、本人がどう感じているのかを確認する
  • 余計なものを買っている自覚があるなら、さみしさや時間を持て余していることが原因かもしれないので、人との交流や予定をつくる
  • 買ったことを忘れているのなら、認知症の可能性があるので受診し、診断を受けたうえで対策を考える

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫

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