いつもの兄姉のゴネ得 腹をくくって再開した関西での母の住まい探し
いつかはやってくると思いつつ、ついつい先送りしてしまう親の介護の準備。関西在住のイラストレーター&ライターのあま子さんもそんな一人。これまで一人暮らしを続けていた母が、2022年正月早々に転倒。骨折→入院という経緯で認知症を発症。姉と兄による“介護押しつけバトル”を経て、いったん母は首都圏に住む兄一家のところで暮らすことになったのですが…。
「親の世話は、逃げたもん勝ち、ゴネたもん勝ちやな」と泣いた日
母が首都圏に住む兄一家と暮らし始めて1カ月余り。この間に、母は見知らぬ地でひとり歩き(徘徊)をして警察に保護されるといったこともありました。早くも兄は、「お母ちゃんを関西へ戻したい」と弱音を吐きはじめました。それに対して姉は怒り心頭。「これまで散々エラそうに言ってたくせに! 私は知らん!」とけんもほろろ。そうすると、兄は「アイツ(姉)に頭を下げるくらいなら、オカンはこっちで施設に入れる!!」と没交渉の状態に。
結局のところ姉兄は、ゴネれば、私が母を引き受けると見越しているのです。これまでも、似たようなパターンで実家の処分や、母の引っ越しなど面倒なことはすべて私に押し付けてきました。親の世話は、逃げたもん勝ち、ゴネたもん勝ちやな…とつくづく思います(泣)。
姉兄に腹は立ちますが、私としては、母の願い通り、住み慣れた関西で余生を過ごさせてあげたい。そのためにいま一度、私も腹をくくりました。そして、関西での母の住まい探しを再開したのです。
えっ!? 「老人ホームのことはよくわかりません」と言うケアマネさん
兄宅で暮らす母が世話になっている担当ケアマネさんとやり取りしたところ、認知症が進む母は、関西に戻っても以前のような一人暮らしは難しく、たとえ、私と同居しても早晩行き詰まるだろうとアドバイスを受けました。やはり老人ホームがベストな選択なのではないかと、私は思いました。そこで、こちら(関西)の担当ケアマネTさんに、老人ホームについて尋ねると、「あまり知らないんです」と意外な返事が返ってきました。
Tさんによると、ケアマネは、高齢者施設で働く「施設ケアマネ」と、Tさんのように居宅介護支援事業所に勤務する「居宅ケアマネ」に分かれているのだとか。Tさんの仕事は、在宅介護に必要な支援の提案やケアプランの作成などで、老人ホーム入居に関してはあまり詳しくないとのことでした。これまでケアマネさんを「介護のプロ」と一くくりで考えていましたが、やはり得手、不得手があるのですね…(もちろん、老人ホームに詳しい居宅ケアマネさんもいます)。
Tさんに「無料相談のできる『老人ホーム紹介センター』を紹介しましょうか?」と言われましたが、仕組みがよくわからないのでお断りして、自力で探すことにしました(老人ホーム紹介センターは後になって利用するのですが、その話はまたの機会に)。
面談スタート直後に「ここはアカン」と即断した理由とは
見学3:2022年11月 B市の高齢者賃貸住宅
幹線道路沿いにあり、環境が良いとはいえません。3階建て、部屋数約15室のコンパクトな施設で、デイサービスが併設されています。
- <施設情報>
●敷金なし
●1カ月の料金:家賃、共益費(水道光熱費込み)、食費、介護保険負担額 あわせて約17万円+自費サービス費3万円+電気代、医療費、生活消耗品代など実費
●部屋:個室25.00㎡ トイレ・洗面台・浴室・IH付キッチン・収納スペース・エアコン・緊急通報装置(ナースコール)
●食事:自社配食サービスで提供
●人員配置:夜間は1人、日中看護師配置
●特徴:家具&テレビ・冷蔵庫・電子レンジ・洗濯機などの家電付
実は、こちらの施設は、見学前から「?」がありました。施設のホームページと、取り寄せたパンフレットなどに記載されている情報が違うのです。それも運営会社名や、入居条件の介護度など、重要な情報が…。モヤモヤしましたが、家から近いことや、家具や家電付という点に魅力を感じました。
見学当日、迎えてくれたのは50代とおぼしき男女です。ハキハキした女性は代表者で、穏やかそうな男性は施設長とのこと。運営会社の名称は、数カ月前に変更したと代表から説明を受けました。
結論から言うと、面談数分で「ここはアカン」とNGを出しました。代表の“圧”が強すぎるのです。たとえば、母が歩けると言うと「要介護3なのに!? ふつうあり得ないでしょ! 理由は??」とたたみかけてくる。「いまのケアマネさんはどうなりますか」と質問すると「バイバイです」とバッサリ。口調がキツくて、上から目線。そして終始ダンマリの施設長。ここは完全に代表の独裁国家のようです。母がここにいれば、ビビりまくったに違いありません。
一通りの説明のあと、施設長が施設内を案内してくれました。集会室や食堂はなく、高齢者施設というよりワンルームマンションのような造りです。以前は普通の賃貸マンションだったものを、手すりをつけるなどして、高齢者専用に変えたのかもしれません。部屋は広いし、キッチンと風呂があり、電子レンジや洗濯機も付いています。施設っぽさがないので、母には抵抗感が少なそうです。魅力的な施設ではありましたが、「母は代表と絶対にそりが合わない」と思い、申し込みはしませんでした。
【感想&後日談】
「親の終の住まい」になるかと思うと、施設管理者やスタッフの対応には目を光らせたいところです。今回の施設の代表者は私のようなぼんやり者でもわかるほど“圧”のある人で、ある意味助かりました。
この記事を書くにあたり、施設の最新情報を確認すると、なんと、また、運営会社が変わっていました。以前もらったパンフレットと見比べると、入居条件、料金体制、食事形態、付帯設備などにも変更があります。このような場合、元の居住者の待遇はどうなるんでしょう? 入居者にも家族にも大きな負担がかかりそうです。老人ホームを探す際には、運営会社の情報もしっかり確認する必要性を再確認しました。なお、複数の検索サイトを確認しましたが、いずれも古い情報でした。ネット情報をうのみにするのも要注意です。