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アラフィフ・ナオコさんのあるある日記

50歳の平均余命が短くなった だからこそ大切な80歳まで健康を保つ秘訣【アラフィフ・ナオコさんのあるある日記~健康寿命編】

ナオコさんは家族のいろいろな病気を経験し、健康であることのありがたみが身に染みてきました。53歳でも会社員としてバリバリ働くナオコさんですが、体力の衰えも痛感しています。そこで、人生100年時代と考えると、この先50年、健康を保ち、高齢期においてもできるだけ元気に活動できるように、自分の生活を振り返り、生活習慣を立て直すことにしました。健康を維持するために50代から心掛けておきたいことは何でしょうか。一緒に考えてみましょう。

50代の私 あと何年生きられるのか

ナオコさんは最近こう考えることが増えました。

「人生100年時代っていうけど、私はあと何年、生きられるのかしら?」

世界一の長寿大国となった日本人ですが、「令和4年簡易生命表」によると、50歳の人の平均余命は男性が32.51年(令和3年: 32.93年)、女性が38.16年(令和3年:38.61年)です。

参考情報

●「令和4年簡易生命表」

「日本人はずいぶん長生きするようになったのねえ……」

ナオコさんはこの数字を見てあらためて驚きました。

「でも、前の年と比べると短くなっているのね」

簡易生命表による日本人の平均寿命や平均余命が短くなってきているのは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響があるとみられています。国の感染予防対策では、生活習慣病など基礎疾患を抱える人を「ハイリスク者」と位置づけていました。高齢になる前から健康状態のコントロールを怠るとパンデミック時などにも健康危機に見舞われやすいことがあらためて分かります。

一方、WHO(世界保健機関)が提唱している「健康寿命」は、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことです。この期間をできるだけ長くすることが重要とされる時代になりました。個人差もあるので、個人個人で40代、50代から心身のメンテナンスをしていくことが重要です。

「そうだった! 単に長生きするだけじゃだめなのよ。健康寿命をいかに延ばすかということが重要だったわ」

ナオコさんは大事なことを思い出しました。

「だけど、この先ずっと健康でいられることに自信が持てないわ。80歳まで現役なんて難しいわねえ」

ナオコさんはいつになく弱気です。というのも、ここ数年、明らかに体力が低下してきていることを自覚していたからです。

まず仕事をこなすスピードが確実に落ちてきました。以前なら2日で仕上げていた仕事が、集中力が続かず、4日ほどかかってしまいます。そして、期限を間に合わせるために残業をすると、疲れがたまり、週末に寝込んでしまうこともありました。一時は「こんな状態になっているのは自分だけかもしれない」と悩みましたが、同年代の働く友人たちに相談すると大なり小なり同じような問題を抱えていました。

「更年期世代の私たちは自分のペースを守って、ゆるゆると働かないと大きな病気になっちゃうから、気をつけないとね」

お互いにいたわりの言葉をかけあい、ナオコさんもオーバーワークには注意していますが、責任のある仕事をまかされることも多く、この環境をなかなか改善することができません。

50代の心身の変化を知ることから始まる

そのうち、健康診断の数値にも異常が現れてきました。若い頃から低かった血圧が気づかない間に上がっていて、高血圧の基準とされる140/90mmHgを超えていたのです。健康診断で問診をしてくれた医師はこうアドバイスをしてくれました。

「更年期は確かに血圧が上がりやすいけれど、それにしても高いですね。高血圧は動脈硬化を引き起こし、心臓病や脳卒中の原因にもなりますから、放置せずに家庭血圧をしばらく測定してみて高い状態が続くのなら治療を始めたほうがいいですよ」

この出来事は、ナオコさんの健康に対する自信をさらに打ちのめしました。

「50代になるってこういうことなのね。30代~40代のころより節制しないと健康を保てないことがよく分かったわ」

ナオコさんはあらためて自分の健康について考えてみようと思いました。

50代から始める食生活のリセット

では、これまでと同じように健康を維持するには、50歳から何をすればよいのでしょうか。この世代に求められるのは、第一に自分の体の弱点を知るということです。健康だと思っていても、ナオコさんのように気づかないうちに、さまざまな数値が異常を示しているかもしれません。それには健康診断を欠かさずに受けることが大切です。高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病は遺伝や体質もさることながら、毎日の生活習慣がその発症と深くかかわっていることが明らかになっています。健診を受けることによって自分がどのような生活習慣病にかかりやすくなっているのかを知り、日ごろの生活を見直したいものです。

「なるほど。私の弱点は血圧ということね」

さっそくインターネットで高血圧を予防する方法を調べてみると、やはり減塩は欠かせないようです。ナオコさんは食事療法の本を買い込み、毎日の食事の薄味に取り組みました。実際にやってみると「中食」と呼ばれる惣菜類は塩分が多く、これまでのように気軽に利用できないことが分かりました。これはフルタイムで働くナオコさんにとって手痛いことでしたが、「だから塩分を摂りすぎて高血圧にもなっていたのね」と新たな気づきにつながりました。

手作りの減塩食は味気なく、娘たちには不評でしたが、夫のマサオさんは応援してくれました。もともと食いしん坊のナオコさん。おいしいものを食べたい一心で、酢、レモン、香味野菜などを上手に使って味に変化をつける技を身に付け、料理のレパートリーも広がってきました。

「お母さん、料理の腕を上げたねえ」

娘たちにほめられ、ナオコさんはまんざらでもありません。

「減塩食って大変だと思っていたけど、やってみると楽しいわ」

そして、食事療法を学んだことでこう思えるようになりました。

「今食べているものが5年後、10年後の自分の体を作るというけれど、とくに50代の食生活は大事だわ。血圧、血糖、中性脂肪、コレステロールをしっかりコントロールしておかないと動脈硬化などが進んで老年期の健康に大きく影響するもの」

50代から始める運動のリセット

さらに50代からの日常生活において重要になってくるのが「運動」です。血圧、血糖、中性脂肪、コレステロールのコントロールも食事だけでは限界があります。また、加齢とともに確実に衰える筋肉を維持するには、たんぱく質を十分にとったうえでの筋トレが必須だといわれています。

「そういえば、高校時代の親友のエリちゃん、週3日、テニスで汗を流すといっていたなあ」

料理が苦手なエリさんは食事にまったく気を使っていないそうですが、それでも健康診断の結果はオールA。エリさんはこう話していました。

「この歳になると誰かにほめられることがなくなるから、医師に“すばらしい”といわれるのはうれしいものよ」

成功事例を目の当たりにして、それほど運動が好きではないナオコさんも重い腰を上げることにしました。自宅で空いている時間に筋トレやウォーキングをしようと思っても続かないことは火を見るよりも明らかなので、思い切って運動教室に通うことにしました。これまでは娘たちのお稽古ごとを優先してきましたが、そろそろ自分の健康に投資してもいい時期と考えるように切り替えたのです。

「有酸素運動は血圧を下げる効果もあるらしいから頑張ってみようかな。有酸素運動と筋トレを同時にできるフラダンスなんていいわね」

こうして、ナオコさんは高血圧の予防を念頭に食事の改善と運動に取り組み、休養や睡眠も十分にとることを心がけるようになりました。というのも、睡眠不足になっている中高年は高血圧や糖尿病になる可能性が高いという健康記事を読んだからです。

ナオコさんはあらためて思いました。

「睡眠時間が少なくても平気だった若いときとは勝手が違うのね。これからは自分の体調を優先して時間の使い方も考え直さなくちゃ。それにしても自分の弱点を知り、血圧を下げることを目標にしたら、日常生活の中で、どのようなことを改善すればいいのか具体的に考えることができてよかったわ。一病息災とは、よくいったものね」

高血圧予防のために改善した生活習慣は、糖尿病や脂質異常症、肥満など生活習慣病全体にもよい影響を及ぼすはずです。

50代は特に欠かせないがん検診

「50代から生活習慣病以外に気をつけたいことはあるのかしら」

それはがんです。日本人の2人に1人はがんに罹患することが分かっていますが、国立がん研究センターがん対策情報センターの統計によると、男女ともに50代からがんに罹患する人が増加し、がんによる死亡率が高いのも55~69歳の人です。そのため、50代からはがん検診も定期的にきちんと受けたいものです。これまでの研究によりがん検診でがんが発見された人のほうが治りがよいことも分かっています。

参考情報

●国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス/がん検診について」

ナオコさんの家族は、医療や介護にまつわるさまざまな問題に直面してきました。数多くのピンチをなんとか切り抜けることができたのも、キーパーソンとなるナオコさんの健康が保たれていたからです。

「家族の病気を通して、健康がかけがえのない財産だということがよく分かったわ」

ナオコさんはしみじみと思うと同時に、医療や介護の問題は決して他人事ではなく、自分にいつ降りかかってきてもおかしくないことも実感しました。

「八方塞がりで解決策がないように思えても必ず助けてくれる人はいる。この分野こそ専門家の力を借りることが大切ね。そのためには、私たちも医療や介護の仕組みをきちんと勉強しなくちゃいけないわ」

ナオコさんのポイントチェック
解決策①
人生100年時代は、単に長生きするだけでなく、健康上の問題で日常生活が制限されることのない健康寿命を延ばすことが肝心です。

解決策②
健康診断を受けることで自分の体の弱点を知り、その弱点を補うことを念頭に日常生活を見直し、食事・運動・休養・睡眠などの改善を図るのが健康への近道です。

解決策③
日本人の2人に1人はがんに罹患することが分かっていますが、男女ともにがんにかかる人が増えてくるのは50代からで、死亡率が高いのは5569歳です。そのため、50代~60代は面倒くさがらずに、がん検診も定期的に受けましょう。

記事の更新情報はこちらを参考にしてください

*今回で健康寿命シリーズは終了します。次からは50sの人たちへのインタビューやインサイト調査の結果を「project50s」の特集ページで公開していきます。「project50s」のLINE公式アカウントで「お友だち」になると記事やインサイト調査などの記事を公開したことを知らせるメッセージが届きます。末尾のバナーリンクから「project50s LINE公式アカウント」(@project50s)にお進みください。

渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)
愛媛県生まれ。医療系出版社を経て、1996年よりフリーランスの医療ライター。著書に『発症から看取りまで認知症ケアがわかる本』(洋泉社)などがあるほか、共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』(宝島社)、『がん―命を託せる名医』(世界文化社)がある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。総合女性誌『家庭画報』の医学ページを担当し、『長谷川父子が語る認知症の向き合い方・寄り添い方』などを企画執筆したほか、現在は『がんまるごと大百科』を連載中。
岩崎賢一(いわさき・けんいち)
埼玉県生まれ。朝日新聞社入社後、くらし編集部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部、オピニオン編集部などで主に医療や介護の政策と現場をつなぐ記事を執筆。医療系サイト『アピタル』やオピニオンサイト『論座』、バーティカルメディア『telling.』や『なかまぁる』で編集者。現在は、アラフィフから50代をメインターゲットにしたコンテンツ&セミナーをプロデュースする『project50s』を担当。シニア事業部のメディアプランナー。

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