糖尿病の治療 ワンストップで上手に受ける方法を考えてみた 【アラフィフ・ナオコさんのあるある日記~糖尿病編(4)】
作・渡辺千鶴、岩崎賢一、イラスト・ゆぜゆきこ
夫・マサオさん(56)が糖尿病治療を始めたナオコさん(53)ですが、ワンストップで糖尿病診療を受けられる方法があるのではないかと探していました。どういう方法があるのか、その場合の課題と一緒に考えてみましょう。
最初から糖尿病専門医のクリニックを受診する
休日に大学時代の友人とランチを楽しむナオコさんは、気持ちのいいテラス席で食後のコーヒーを飲みながらおしゃべりに花を咲かせました。この年齢になると、どうも健康の話題が多くなります。
「そういえばね、夫が糖尿病になっちゃって」
ナオコさんはマサオさんの糖尿病の顛末について友人のマリさんに話し始めました。
「大学病院で糖尿病の合併症を半年に1回チェックしてもらっているけど、あちこちの病院に行くのは面倒だから、私なら1カ所の医療機関で診てほしいわ。何でもワンストップで便利にしようという世の中の流れに逆行していると思わない?」
ナオコさんは同意を求めました。
すると、マリさんからは「うちの母(76)は近所のクリニックで糖尿病の治療も合併症のチェックも受けているわよ」と意外な返事が返ってきました。
「そのクリニックの先生は糖尿病専門医なの?」
「糖尿病専門医で、とても親切な先生なの」
1カ所の医療機関で糖尿病の治療と合併症のチェックを受けるには、マリさんのお母さんのように診療所を開業している糖尿病専門医に最初からかかる方法があります。日本糖尿病学会のホームページでは糖尿病専門医が検索できるようになっており、リストには勤務先も明記してあるので、診療所の専門医を簡単に見つけることができます。
参考情報
●日本糖尿病学会HP 専門医検索
*インターネット情報は、最新情報を各自で確認することが重要です。
クリニックでできない検査は他の医療機関を受診
「その手があったのか!」
ナオコさんが感心しているとマリさんは「でもね」と言葉を続けました。
「糖尿病性網膜症のチェックは眼科じゃないとできないから、年に1回紹介してもらった眼科医院で眼底検査を受けているわよ。心電図は撮ってもらっているけど、脳のMRIやCTは撮れないので、検査によっては他の医療機関に行くことになるわね」
また、マリさんのお母さんが通院しているクリニックは糖尿病療養指導士などの専門スタッフもいないということでした。ただし、近年は都市部を中心に、専門性を生かして「糖尿病専門クリニック」を開業する医師も出てきています。このような専門クリニックには、糖尿病療養指導士の資格を持つ看護師や管理栄養士が在籍していることが多く、総合病院や大学病院とほぼ同レベルの治療や療養指導を受けることができます。料理教室や運動教室などのサービスを用意し、療養を支援してくれる専門クリニックもあります。インターネットで探してみるのもいいでしょう。
マリさんはこう解説してくれました。
「クリニックでは検査機器が限られるといっても3大合併症や大血管障害はきちんとチェックしてもらっているようだし、その先生は在宅医療もやっているので、母の先々のことを考えると安心だと思っているのよ」
同じ糖尿病といっても年齢によって医療機関を選ぶポイントが違ってくることに、ナオコさんは気づきました。糖尿病のように患者数の多い病気は、いろいろな医療機関で対応しているので、それぞれの特徴(メリット、デメリット)をよく理解したうえで、自分の年齢や生活スタイルなどの状況に合った医療機関を選ぶのがよさそうです。
栄養指導の多様な受け方
一方、マリさんが一つ残念に思っているのは、クリニックでは管理栄養士による栄養指導が受けられないことです。
「母の年齢になると好きなものを食べさせてあげてもいいように思うけど、高血圧症も抱えているから脳卒中のリスクがさらに高まるのよ。脳卒中で寝たきりになるのは本人も家族も避けたいから毎日の食生活にはやっぱり気をつけてほしいわ」
マリさんのお母さんのような場合、地域のクリニックを受診しながら管理栄養士による栄養指導を受けるには、主に2つの方法があります。1つ目は、総合病院や大学病院の「外来栄養指導」のサービスを利用すること、2つ目は、各都道府県栄養士会の「栄養ケア・ステーション」のサービスを利用することです。
総合病院や大学病院の中には、地域の糖尿病患者を対象に「外来栄養指導」を実施している施設があります。手続きとしては、かかりつけ医から病院の地域医療連携室に依頼してもらい、栄養指導の予約を取ってもらうパターンが多いようです。このサービスを希望する場合は一度、かかりつけの医師に相談してみましょう。
各都道府県の栄養士会では、地域住民を対象に管理栄養士や栄養士が食生活のサポートを行う「栄養ケア・ステーション」という事業を展開しています。なお、栄養ケア・ステーションのサービスの内容は都道府県によって多少異なります。詳細については住んでいる地域の都道府県栄養士会の栄養ケア・ステーションに問い合せましょう。
参考情報
●日本栄養士会HP 栄養ケア・ステーションの仕組み
●日本栄養士会HP 全国の栄養ケア・ステーション 検索
*インターネット情報は、最新情報を各自で確認することが重要です。
このほか保健所や保健センターでも管理栄養士が活動しており、健康相談の中で食生活の悩みを受け付けています。また、地域で行われている栄養相談の情報を教えてくれることもあります。最近は管理栄養士が栄養相談を行っている保険薬局も増えています。インターネットの検索サイトで、「保険薬局 栄養相談」などのキーワードを入力すると、各地で活動している保険薬局がヒットしてきます。
「探してみると、大きな病院にかかっていなくても地域の中で栄養指導や栄養相談を受けられる場所はけっこうあるのね」とマリさんは驚いていました。
「栄養ケア・ステーションの料理教室なんて、すごくいいじゃない。私もマサオさんの食事づくりには苦労しているのよね」
ナオコさんとマリさんは栄養ケア・ステーションのサービスを申し込んでみることにしました。
- ナオコさんのポイントチェック
- 解決策①
ワンストップで治療を受けるには、診療所にいる糖尿病専門医に最初からかかる方法があります。ただし、合併症を調べる検査によっては他の医療機関を受診することもあります。近年は都市部を中心に、大きな病院とほぼ同レベルの治療や療養指導を受けられる糖尿病専門クリニックも登場しているので、インターネットなどを利用して情報を集めてみましょう。
解決策②
地域のクリニックにかかっていて、管理栄養士による栄養指導を受けたい場合は、下記の方法があります。
1. 総合病院や大学病院の「外来栄養指導」のサービスを利用
2. 各都道府県栄養士会の「栄養ケア・ステーション」のサービスを利用
いずれの場合も医療機関や都道府県によって対応や内容が違うのでよく調べてみましょう。
記事の更新情報はこちらを参考にしてください
*今回で糖尿病シリーズは終了します。次のシリーズのお知らせ等は、この連載記事を掲載している「project50s」のLINE公式アカウントで「お友だち」になると公開メッセージなどが届きます。末尾のバナーリンクから「project50s LINE公式アカウント」(@project50s)にお進みください。
- 渡辺千鶴(わたなべ・ちづる)
- 愛媛県生まれ。医療系出版社を経て、1996年よりフリーランスの医療ライター。著書に『発症から看取りまで認知症ケアがわかる本』(洋泉社)などがあるほか、共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』(宝島社)、『がん―命を託せる名医』(世界文化社)がある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。総合女性誌『家庭画報』の医学ページを担当し、『長谷川父子が語る認知症の向き合い方・寄り添い方』などを企画執筆したほか、現在は『がんまるごと大百科』を連載中。
- 岩崎賢一(いわさき・けんいち)
- 埼玉県生まれ。朝日新聞社入社後、くらし編集部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部、オピニオン編集部などで主に医療や介護の政策と現場をつなぐ記事を執筆。医療系サイト『アピタル』やオピニオンサイト『論座』、バーティカルメディア『telling.』や『なかまぁる』で編集者。現在は、アラフィフから50代をメインターゲットにしたコンテンツ&セミナーをプロデュースする『project50s』を担当。シニア事業部のメディアプランナー。