疎外感と自責の念で母を怒鳴りつけた私 救ってくれたのはオレンジの輪
《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
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「お願いだから、一人で外に出ていかないで!」
久しぶりの親戚の集まり。
周りになにか言われないかと、緊張していた私は、
やってしまった。
認知症がある母に、声を荒らげてしまったのだ。
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親戚たちになにを言われるかと、身構える。
けれど誰ひとり、
私と母に立ち入らなかった。
見守られているのか、それとも、
あきれられているのか、わからない。
私は疎外感と、
母への申し訳なさで、いっぱいになった。
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——後日、親戚のひとりから、
とつぜん、電話があった。
「私、なんにもできないけど、
認知症サポーター養成講座、受けてみたの」
その人のまさかの言葉に、涙がこぼれる。
母と私を思いやろうとする人の、
あたたかな思いになぐさめられて。
「遠巻きに見ているだけかと思っていた知人のカバンに、
オレンジリングを見つけて、涙が出そうになった」
ご家族に認知症がある人がいる方が、話していたことです。
ご存じかと思いますが、オレンジリングは、
認知症がある人やご家族を、できる範囲で見守ったり、
応援したいと思ったりしている人が、
目印として持っている、オレンジ色のリストバンドです。
なかには、周りから見えるようにと工夫して、
カバンにキーホルダーのようにぶら下げている人もいます。
最近は、「認知症サポーターカード」を定期入れなどに入れて、
持ち歩いている人もいます。
オレンジリングやサポーターカードは、各所で開催されている、
認知症サポーター養成講座を受けるともらえるので、
認知症について学び、理解があるという証しでもあります。
とはいえ、赤い羽根の募金の羽などでもそうですが、
身に付けるのが照れくさいな、と思うこともあるでしょう。
「講座を受けて、認知症サポーターにはなったけれど、実際にはわからないことだらけだし…」と
謙虚な思いを抱かれている方もいます。
けれど、認知症当事者さんが困りごとがあった際には、
オレンジリングをつけている人には当然、
声をかけやすくなるものです。
回り回って、
認知症を理解しようとしているその思い自体に、
励まされている誰かがいるということは、
とても意味のあることではないでしょうか。
とはいえ、かくいう私は、
オレンジリングを紛失してしまってから、だいぶたちます。
これを機会にもう一度、認知症サポーター養成講座を受けてみようかと思っています。
皆さまも、ご一緒にいかがですか?
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
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