夏にエアコンつけずに散乱した部屋で…独居の父が心配【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
認知症地域支援推進員で介護支援専門員の田中リエ子さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.先日父(78歳)が一人で住む実家に帰省したところ、エアコンをこの夏一度も使っていなかったことがわかり、驚きました。部屋が散らかっていたり、以前はできていたゴミの分別ができていなかったりして、このまま一人暮らしをさせていいのか心配です(51歳・男性)
A.高齢の方で、夏でもエアコンを使わず、窓を開けて扇風機をかけるだけ、という方は少なくありません。「エアコンは体によくない」というイメージをお持ちだったり、暑さを感じにくくなっていたりすることが原因のようです。
さらに高齢になると、のどの渇きを感じにくい、なるべくトイレに行きたくないといった理由で、水分も摂らない傾向があります。慢性的に脱水を起こし、さらに食欲も低下して栄養不足の状態だと、脳の機能が低下して、認知症のような症状が出ることがあります。お父さんの「部屋が散らかっている」「ゴミの分別ができない」という状況は、脱水によって起きている可能性もあります。お父さんにとっては部屋やゴミの分別について今の状態が当たり前になっているかもしれませんが、脱水や栄養不足を改善したうえで、一度相談者が一緒に片づけや分別をすると、その状態を維持しようとお父さん1人でも以前のようにできるようになる可能性はあります。
もちろん認知症の初期症状である可能性もあるので、一度かかりつけ医を受診し、脱水なのか認知症によるものなのかといったことを診断してもらうことをおすすめします。
いずれにしても、お父さんは誰かの見守りが必要な状況だと思います。相談者が毎朝電話をかけて「エアコンをつけて」「水分を摂って」と伝えたとしても、すぐに実行に移すのは難しいかもしれないですし、状況がわからないと心配ですよね。要介護、あるいは要支援の認定を受けてデイサービスや訪問介護を利用できると、スタッフの目が入るので安全に一人暮らしを続けられると思います。
介護保険サービスを利用できない場合でも、お父さんが交流のある近所の方に相談者からあいさつをしておくと、気にかけてもらえるかもしれません。毎朝「おはよう」とあいさつがてら家をのぞき、部屋が暑くなっていないかなどチェックしてくれる人が1人でもいると安心ですよね。
地域の人の見守りが難しい場合は、お父さんの家に見守りカメラを設置するという方法もあります。見守り機能付きのエアコンもあり、部屋の温度によって自動で温度調節したり、スマートフォンで遠隔操作したりする機能が備わっています。エアコンを買い替えるのは大掛かりですが、室内の温度を遠隔でチェックできたり、温度が基準値を超えるとアラームが鳴ったりする温度計もあります。高齢者の熱中症は深刻な問題で、熱中症対策のためのさまざまな機器があるので、活用すると安心材料の1つになるのではないでしょうか。
お父さんが一人暮らしを続けることを希望するのであれば、地域の人、見守り機器などの力を使って、安心して過ごせるといいですね。
【まとめ】一人暮らしの父がエアコンを使わず、部屋の片づけやゴミの分別ができなくなっているときには?
- 脱水や栄養不足によって片づけやゴミの分別ができていない可能性があるので、一度かかりつけ医を受診する
- デイサービスや訪問介護を利用する
- お父さんと交流がある近所の人に声をかけて、見守りをお願いする
- 見守りカメラや見守り機能付きのエアコン、温度計を設置するなど、お父さんの様子を遠隔でチェックする
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫