年金額は?に不信感の父 ケアマネが尋ねる理由とは【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
地域包括支援センターに勤務する中村亘さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.父(78歳)がパーキンソン病で要介護となり、ケアマネジャーと面談したのですが、年金額を聞かれて「なぜ言わないといけないんだ」と怒り出してしまいました。ケアプランを作成するにあたって必要だと説明してもらったのですが、不信感を抱いてしまったようで困っています(49歳・男性)
A.最初に抱いた不信感を払拭(ふっしょく)するのは難しいことなので、お困りのことと思います。私自身もケアマネジャーとして利用者の方と面談することがありますが、初回の質問についてはとても気を使います。特に年金額などの収入や排泄(はいせつ)の状況は、ケアプランを組むにあたって重要なことではあるのですが、本人の尊厳にも関わることです。決してそんなことはないのですが「年金額=今までの仕事の評価=人生の評価」と捉える方もいて、年金額が多いと“よい人生”、少ないと“悪い人生”だと相手に思われるのではないかと気にする人もいらっしゃるのではないでしょうか。事務的な感じでストレートに聞かれていたとしたら、お父さんが怒り出すのも仕方のないことかもしれません。
まずは、ケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所の管理者に、今の状況をそのまま伝えてはいかがでしょうか。改めて管理者から年金額を把握したかった理由についてお父さんに説明してもらうと、納得してもらえるかもしれないですし、それでも不信感がぬぐえないということであればケアマネジャーを変更してもらうというのも1つの方法です。
ケアマネジャーが年金額を確認するのは、介護サービスをどの程度使えるのかを把握することはもちろん、年金収入などによって介護保険施設やショートステイを利用する場合の食費や居住費の負担限度額が変わってくるためです。施設入居を検討する際には、収入によって提案する施設も変わってきます。
とはいえ、最初に必ず年金額を確認しなければケアプランが組めない、ということでもありません。基本的にケアマネジャーは利用者の自宅に訪問して面談するので、自宅の様子などから生活の状況をある程度判断できることもあります。年金額を聞かないほうがよさそうな利用者には、介護の必要度などに合わせてケアプランを組み、「このケアプランだと毎月の自己負担額はこの程度になりますが、よろしいですか?」と確認して、それで問題ないということであればそのまま進めていき、信頼関係ができたと感じたときに具体的な年金額など、より踏み込んだ質問をしていくこともできます。
信頼関係ができていない相手に収入を知られるのは、嫌なものだと思います。お父さんの気持ちに配慮しながら、今後の介護に関する態勢を整えていけるといいですね。
【まとめ】父がケアマネジャーに年金額を聞かれて怒り出し、不信感を抱いているときには?
- ケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所の管理者に状況を説明して、相談する
- 管理者から年金額を把握する必要性を説明してもらう
- 父の不信感を払拭できないときには、ケアマネジャーを交替してもらう
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫