認知症の義父が孫を見に毎日小学校へ 困っています【お悩み相談室】
者表示名:構成/中寺暁子
社会福祉士の熊谷恵津子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.近所で義母と暮らす義父(73歳)は初期の認知症で、孫が通う小学校に行って、毎日のように校庭をのぞいています。先生方や孫に外から声をかけるので、学校では有名人に。迷惑をかけますし、我が息子(孫)も恥ずかしいようでやめてほしいですが言い出せず、困っています(46歳・女性)
A.お義父さんは孫のことをとてもかわいがっているのですね。それがわかるからこそ、相談者もやめてほしいとは言い出せないのでしょう。私もやめる必要はないと思います。
お義父さんは、なぜ毎日のように学校に行くのでしょうか。「孫を激励しに行きたい」「学校のために役に立ちたい」など、何かしらの思いがあるはずです。まずは学校に行って何がしたいのか、お義父さんの気持ちを聞いてほしいと思います。目的によっては、かなえてあげられるかもしれません。
ただし、認知症だから仕方ない、認知症だから何でも許される、ということではありません。「休み時間であればいいけれど、体育などの授業中は声をかけてはいけない」「学校の中に入ってはいけない」といった守るべきルールは、しっかり説明してほしいと思います。お孫さんの時間割を渡しておくのもいいかもしれません。認知症の症状によって時間を認識するのが難しい場合は、お義母さんにも時間割を渡して共有しておくといいですね。
周囲の理解も大事です。学校の先生には義父の行動を謝りつつ、認知症であること、義父の思いなどを伝えておきましょう。これを機に学校全体で認知症への理解を深めてもらえると、地域にとってもいいことですよね。例えば学校で認知症についての正しい知識を学べる「認知症サポーター養成講座」を開いてもらうのはいかがでしょうか。私は認知症サポーター養成講座の講師をする機会もあるのですが、子どもの思考は本当に柔軟で、理解しようとする力が高いと感じます。認知症のことを正しく理解できれば、お孫さんの「恥ずかしい」という気持ちもなくなるのではないでしょうか。
認知症は他人事ではありません。お義父さんのことを機に、認知症について正しい知識をもつ人が増えたら、地域の人たちにとっても住みやすい環境になっていくと思うのです。
【まとめ】認知症の義父が毎日のように孫の小学校をのぞきに行くときには?
- どのような思いで毎日学校に行くのか、義父に聞いてみる
- 「授業中は邪魔をしてはいけない」など、義父に守ってほしいことを説明する
- 学校の先生に義父の行動を謝りつつ、認知症についての理解を深めてもらう