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運動ゼロでカロリーを考えずにやせられるのか? 大学教授と管理栄養士が出した結論~その2~

マンガ・木村いこ

運動ゼロでカロリーを考えずにやせられるのか――。『好きなものを食べてやせる食生活』(池田書店)の著者、東京理科大学教授で医学博士の堀口逸子さんと管理栄養士の平川あずささんが、アラフィフや50代と一緒にWell-Being&Social goodを考える「project50s」で対談してくれました。日常生活に落とし込みながら「ゆるやかにしっかりやせる」方法と考える3回の記事の2回目「大学教授と管理栄養士が出した結論~その2~」は、50代からの体の変化に合わせた「緩やかな糖質制限食」を成功させるためのメソッドです。

メソッドは「栄養素からのアプローチはNG」から始まった

堀口逸子さん(以下、堀口さん):私も、入院して管理された状態を2カ月体験できたからこそ、食べる量の「標準」が分かったのです。病院では絶対的に管理されているから。

平川あずささん(以下、平川さん):病院で入院しているときに出てくる「一般食」だと主食でエネルギーを調節していきます。だからおかゆの量とかご飯の量が増えれば増えるほどエネルギーが多くなり、ある程度まではおかずはほぼ同じなんです。だから堀口さんのときも、たくさんご飯が出ていたんですよね。

堀口さん:ご飯はたぶん150グラムから200グラムはあったと思います。

平川さん:堀口さんは身長が高いから換算するとそんな量になるんですけれど、おかずの量が変わらないのにご飯だけが多いと食べきれなかったと。

堀口さん:病院に勤務経験のある看護職の友人に「ご飯の量が多い」と教えてもらい、「最初から減らしてもいいんだけど、リハビリで『今日お腹すいた』っていうときが出てきてもご飯の量を増やせないから、多いままにして自分で食べる量をコントロールしている方がいいかも」というアドバイスを受けました。

――入院すると栄養指導がありますし、健康診断の保健指導で体重や食事の話を聞くことがあります。

平川さん:堀口さんとの会話の中で、「極力しないようにして」っていわれたのは栄養素の話です。「何をどれだけ食べればいいのかが知りたいの。だから、たんぱく質がとか、ビタミンがとか、ミネラルがとか、亜鉛や鉄分を摂りましょうとかということは、わからないからいいんです」っていわれました。

堀口さん:食べ物を見ながらそんなことなんて誰も考えてないです。

――栄養素を表示する食品も増えていますよね。

堀口さん:栄養素でいわれても、1日3食や2食の中でそれをどう摂っていけばいいのかが分からないんです。

【ちょっとちら見せ!】「やせる食生活のポイント」は、3つの300

50代からの体の変化に合わせた「緩やかな糖質制限食」のすすめ

――アラフィフや50代の人たちは、仕事をしたり、結構忙しく社会生活をしていたりするから、食事の場所もさまざまです。そこにだんだん代謝が落ちてくるというこの年代特有の要素が入ってきます。だけど、日常生活に落とし込むためには、わかりやすくシンプルにすることですよね。平川さんは堀口さんにどう打ち返しましたか。

平川さん:そのときに考えたのが3つの分類です。まずご飯。次にタンパク質源となる肉や魚や卵など。そして野菜類です。堀口さんの場合には運動量も少ないですし、筋肉を落とさないようにしていかないと体を支えられなくなってしまいます。体を動かすエネルギー源となるのが炭水化物や脂肪、たんぱく質です。炭水化物はご飯やパン、麺類などに多く含まれ、体内に取り込まれることでエネルギーへと変換されます。ということは、過度な糖質制限をするとエネルギー不足になってしまうということです。だから、緩やかな糖質制限食なんです。

――ライフスタイルに落とし込めないと続きませんよね。

平川さん:野菜類をしっかり取らなきゃいけないっていっても、糖質の多い野菜とそうじゃない野菜があるよねとか、堀口さんとはいろいろ議論しましたが、それをいちいち考えるのが大変だというのでそういったことを全部含めて野菜類ということにしました。それがたぶん一般の人にもやりやすい分類なのかもしれません。健康日本21では野菜は1日350グラムとりましょうということだったので野菜は300グラム以上をとることを目指すことにしました。

堀口さん:カレーを食べるときにジャガイモを入れますよね。そのときのイモの量はどれぐらいが適切か聞くと、「1個ぐらいならオッケーですよ」って。だから制限ではなく、「食べていいんだ」ってなるんです。

平川さん:ただ、カレーの場合はイモの問題じゃなくて……。

堀口さん:レトルトカレーが結構美味しいので「どう考えるの?」って聞くと、「がんばってエネルギーを消費したときのご褒美にしてね」っていわれました。

平川さん:ルウには油脂が多いんです。それに加えて結構、糖質が入っています。甘みがすごく入っています。そのため油脂と甘味でエネルギーは過剰になりやすく、血糖値も上がりやすいのです。だから、カレーは疲れた時やたくさん動いた日のエネルギー補給という位置付けにしたほうがたぶんダイエットでは上手くいくんですね。

堀口さん:いわゆる北海道で売り出していたスープカレーは、サラサラじゃないですか。

平川さん:堀口さんの場合、スープカレーを頼り、そこに野菜をたくさん入れていましたね。

堀口逸子さん

――スープカレーはいいんですか。

平川さん:スープカレーのほうが普通のカレーより油脂や糖質が少ないです。ただ、堀口さんは、結構、食べる量をコントロールできている人だったということを付け加えておきます。

――2つ目は。

平川さん:2つ目が、肉、魚、卵などで、筋肉を維持するために必要なタンパク質での摂取になります。肉、魚、卵は大体の重量の5分の1がタンパク質の量になります。堀口さんの場合、筋肉を付けてほしいし、骨折を治すので消耗も激しいことを考えて、60グラムの5倍の300グラムに設定しました。

堀口さん:タンパク質や炭水化物を減らした食生活をしていると、タンパク質をタンパク質として体が使わず、エネルギー源として使ってしまうことになったら、せっかく肉を300グラム食べたとしてもタンパク質として摂取される量が60グラムにならないってことじゃないですか。ということは、炭水化物も食べていないとダメなんだなって。

平川さん:栄養は積み重ねなんです。一番下の土台の部分は適正なエネルギー摂取になるんですよね。その内訳はエネルギー産生栄養素と言われている炭水化物、脂質、タンパク質なのですが、減らしすぎてはいけないのは、炭水化物なんです。脂質とタンパク質だけでエネルギーをまかなうのには無理がありますから。

堀口さん:だから、なおさら50代以上の人たちは、更年期を経て筋肉が落ちていくのだから、炭水化物をある程度摂らないといけないんだということが分かりました。

◆近日公開、スーパーやコンビニの「好きなものを食べてやせる食生活 総菜コーナーの充実から目を背けるべきか? 大学教授と管理栄養士が出した結論~その3~」にづづく。

【ちょっとちら見せ!】みんなの疑問に堀口さんと平川さんが答えているQ&A

堀口逸子さん(ほりぐち・いつこ)

東京理科大学薬学部教授。前内閣府食品安全委員会委員。長崎大学歯学部卒業。歯科医師。長崎大学大学院医学系研究科博士課程公衆衛生学専攻修了。博士(医学)。専門は公衆衛生学、リスクコミュニケーション。

平川あずささん(ひらかわ・あずさ)

管理栄養士。博士(生活科学)。内閣府食品安全委員会事務局・技術参与。食生活ジャーナリスト。大妻女子大学大学院人間生活科学専攻博士課程修了。専門は食育・栄養教育。

出版社・池田書店
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