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活動的な父がトラブルでご近所の厄介者に 家にいるべき?【お悩み相談室】

清掃するひとたち、Getty Images
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社会福祉士の熊谷恵津子さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。

Q.近所で暮らす父(78歳)は家でじっとしていられないタイプで、これまで通学路の見守りや公園清掃などのボランティアをやってきたのですが、最近になって仲間とケンカしてしまい、近所で厄介者扱いされています。家で静かにしているように言ったのですが、少しかわいそう。どうすればいいでしょうか(46歳・女性)

A.家でじっとしていられないタイプの人が、外に出られないというのは、非常にストレスがたまることですよね。家に閉じ込めてしまうと、さらなる問題が生まれる可能性があると思います。

人の問題点というのは目立ちやすいものですが、評価点は意外と目立たないのですよね。お父さんの場合は、仲間とケンカしたということばかりに目が向いて、家族は「迷惑になるようなことはしないで」と言ってしまいがちです。しかし地域のためにボランティア活動をされてきたのは素晴らしいことですよね。まずは「ごくろうさま。疲れていない?」など、ねぎらいの言葉をかけてあげてほしいと思います。

家族としては、お父さんが外に出ても厄介者扱いされないような環境をつくれるといいですね。なぜお父さんは最近になって仲間とケンカし、厄介者扱いされるようになったのでしょうか。高齢になると、自分の能力や役割に対して喪失感を抱くことが多くなります。例えば身体的な衰えを感じるようになり、今まで当たり前のようにできていたことができなくなります。理解力が低下して、相手の言っていることがよくわからないといった場面もあるでしょう。さらに、身近な人を亡くすといった経験も増えていきます。喪失感によって落ち込み、引きこもりがちになる人もいますが、外に向けてイライラをぶつけてしまう人もいます。お父さんの背景に目を向けて、心情を理解してあげてほしいと思います。

そしてボランティアで関わる人たちにも、お父さんのことを理解してもらえるといいですね。そのためには、家族が間に入ると、うまくいきやすいと思います。例えばボランティアを仕切っている人などに、「父が迷惑をかけていないですか?」と聞いてみることから始めて「父は地域の人の役に立ちたいという思いが強いのですが、年をとって理解力が低下しているせいか、わからないことがあるとすぐに大声を出してしまうんです。決して悪気はないんですよ」など、お父さんの気持ちを代弁してはいかがでしょうか。周りの人も何となくはそういうことだと理解しているかもしれませんが、家族から言われると改めて納得できるはずです。「一生懸命やってくれているし、確かに高齢になるとそういうところはあるから仕方ない」と受け入れやすくなると思います。問題を起こさないようにお父さん自身の意識を変えるのは、私の経験では難しいかなと思います。

地域のボランティアをして人の役に立つことが、きっと今のお父さんの生きがいなのでしょう。できるだけ長く続けられるといいですね。

【まとめ】最近ボランティア仲間とケンカし、厄介者扱いされている父。家に引きとめてはいるが、かわいそうなときには?

  • お父さんを外に出さないのは逆効果。まずはこれまでボランティアをしてきたお父さんをねぎらう
  • お父さんはなぜ最近になってケンカをしてしまったのか。お父さんの心情を理解する
  • ボランティアを仕切る人などにお父さんの心情や状況を伝え、受け入れてもらえるように橋渡しをする

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