認知症とともにあるウェブメディア

今日は晴天、ぼけ日和

ありがとう、でも自分で決めたいの それが生きる力になるから

《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》

「デイサービス ひだまり」のパンフレットを見るひと

ねぇ、ケアマネさん。
この前、ご紹介いただいた
デイサービスだけど。

やっぱり
他のデイも見てから、
自分で決めたいの。

せっかくだけど
契約はもうちょっと待ってね。

洋服を選ぶひと

幸子、ごめんね。
せっかく買ってきてくれた
このワンピース。

着てはみたんだけど、なんか違ったの。

やっぱり自分の目で見て
買ったやつがいちばんみたい。

お気に入りの服を着て微笑むひと

みんな優しくて、
先回りして与えてくれるけど。

認知症があったって、
自分のことは自分で選びたい。

こんな私はワガママですか?

「ワガママな人ほど、長生きする」

そんな確証もない話を、たまに耳にします。
ちょっと笑ってしまいながらも、
確かにそうかもしれない、と改めてうなずく私がいます。

なぜなら、うちの血筋は明るく長命な人ほど、
それが当てはまりました。

具体的には、

「自分のことは、自分で決める」
「相手の好意でも、嫌なら遠慮なく断る」

などの言動でしょうか。

認知症があってもなくても、です。
もちろん、周りの家族は嫌というほどに振り回されましたが。

そんな私的な体験から、
認知症であってもそれにとらわれず、
最期を迎えるために大切なのは、
「自分に選択権がある」という環境なのかもしれない、と
私は思っています。

つい、周りは、

「認知症で分かりにくいことがあるだろうから、本人ではなくご家族に相談しよう」

「うまく答えられないだろうから、代わりに身内の私が答えてあげよう」

「買い物が大変だろうから、あらかじめ買ってきてあげよう」

——と先回りをしてしまいます。

けれど、ご本人の意志が伴わなければ、
他者から手助けされるばかりでは、
それが、たとえ善意からであっても
ご本人の生きる力を奪いかねません。

自分のことぐらい、自分で決めさせて。

その希望こそ、
ご本人にとっての生きる力、
そのものなのだから。

《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》

前回の作品を見る

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