「いずれ施設に」と言う父 でも、金銭面の話ができません【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
社会福祉士の熊谷恵津子さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.一人暮らしの父(81歳)は「いよいよ一人で暮らせなくなったら、施設に入れてくれ」と言っています。施設に入るとなると費用がかかるので、それとなく貯金額を聞いたところ、はぐらかされました。今のうちに父のお金について知っておきたいです(56歳・男性)
A.確かに将来的なことを考えると、親のお金について知っておければ安心ですよね。ただし、お金の話は、家族だからこそ慎重に進めてほしいと思います。現状ではお父さんは一人で暮らせているわけですから、お金の管理も自分でできるという自尊心があるはずです。そんな中で、突然、お金のことを切り出されても、素直に答えられないのは当然です。
この先、お父さん自身が一人で暮らすことやお金の管理について、不安になる場面が出てくるでしょう。そうしたときが、親子でお金のことについて話す、いいタイミングではないでしょうか。例えばお父さんが「お金をどこにしまったのかわからなくなった」「ATMの操作がわからないからついてきてほしい」といった不安や相談を口にしたタイミングです。
直接お父さんからの相談はなくても、「不安なことはない?」「生活で困っていることはない?」と日ごろから確認することも大事です。特に遠方に住んでいる場合は、お父さんの様子がわかりにくいでしょうし、お父さん自身も相談しにくいかもしれないので、電話や手紙でこまめにやりとりしておくといいですね。久しぶりに会っていきなりお金の話をされたら、たとえ家族でも不信感を抱くと思います。
いざ、お金の管理を任されたときには、一緒に通帳を見ながら、金額を1つ1つ確認しておくことをおすすめします。あいまいにせずにお互いに確認することが、相手への信頼感につながりますし、万が一お父さんがこの先認知症になって、そのこと自体は覚えていなかったとしても、信頼感は残るものです。
お父さんの自尊心を大事にしつつ、ゆっくりと段階的にお金に関する情報を知っていけるといいですね。
【まとめ】一人暮らしで高齢の父に貯金額を聞いても、はぐらかされるときには?
- 一人暮らしやお金の管理について、お父さん自身が不安を感じたタイミングでお金の話を切り出す
- 日ごろから連絡をとり、不安なことや困っていることがないか確認する