グループホームの担当者は変更可能?母が嫌がっています【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
社会福祉士の熊谷恵津子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.母(83歳)は認知症でグループホームに入居しているのですが、担当のスタッフと気が合わないようで「あの人苦手」と言っています。管理者に相談しましたが、少人数でやっているのでスタッフの交代は難しいと言われてしまい、困っています(57歳・男性)
A.私自身、グループホームの管理者をやっていたことがあるので、こうしたお悩みはよくわかります。グループホームは、認知症の人が5~9人の「ユニット」と呼ばれる単位に分かれて生活する施設で、1つの施設につき3ユニットまでと決められています。少人数のスタッフで運営しているので、管理者の立場からすると、スタッフを交代するというのは現実的に難しいことなのです。
誰でも気が合う人、合わない人というのは、いますよね。認知症の人も同じです。気が合わないからといって、その人を排除してもお母さんご自身のためにならないのではないでしょうか。苦手な人とどうやったらうまくやれるかを思考することは、脳への刺激にもなります。苦手な人と付き合わなければならないことは、お母さんのこれまでの人生でも当然あったはずで、うまく付き合う術は、身についているのではないでしょうか。
家族としてできることは、あせらずに見守ること。お母さんの苦手意識を助長しないように、そのスタッフのいい面を見つけたら「こんな一面もあるよ」と伝えてほしいですね。苦手だと感じている理由を聞けば、解決できる場合もあると思います。意外と「ヘアスタイルが気に入らない」「箸の上げ下げが気になる」「あいさつが素っ気ない」など、ささいなことかもしれません。もちろん、スタッフがお母さんの人間性を傷つけるような発言をした、といった場合、話は別です。管理者にしっかり伝えて、早めに対応してもらいましょう。
施設側も家族からの相談を受けて、スタッフの交代はできなくても、何かしらの対応は考えてくれているのではないでしょうか。管理者もなぜ利用者とスタッフの折り合いが悪いのかを考え、対応を検討すると思います。例えば入浴介助だけは別のスタッフに替わる、なるべくスタッフ2人で対応するといったことであれば、勤務体制を大きく変えなくても可能だと思います。時間をかけていくことで、合わないと思っていたスタッフとの関係性にも少しずつ変化が見られるかもしれません。
グループホームは少人数でアットホームなところがいい面ですが、裏を返すと逃げ場がないともいえます。なるべく閉鎖的にならないように、ボランティアに参加してもらったり、地域の人と交流したりする工夫は必要です。家族もお母さんを支えるチームの一員として、スタッフと一緒に対策を考えていけるといいですね。
誰かのことを苦手だと思うことは、悪いことではありません。むしろ認知症でも自分の得意、不得意をわかっている証しだと思います。お母さんもスタッフもお互いにがんばって、歩み寄れるといいですね。
【まとめ】グループホームに苦手なスタッフがいる母。スタッフを交代してもらえないときには?
- 苦手な理由を聞くほか、スタッフのいい面を見つけたら、お母さんに伝える
- スタッフが人間性を傷つけるような発言をした場合には、管理者にしっかり伝えて、早めに対応してもらう
- スタッフの交代以外にできる対策を施設と家族で一緒に考える