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外出中にケガをした認知症の母 今後は外に出したくない【お悩み相談室】

横断歩道に倒れた自転車、Getty Images
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社会福祉士の熊谷恵津子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の母(79歳)と同居しています。以前1人で出かけたら、自転車とぶつかって転倒し、ケガをしてしまいました。それ以来怖くて1人では外に出したくありませんが、出ないように見張っているのも大変です(50歳・女性)

A.認知症の人や高齢者に限らず、誰でも行動を制限されるのは、ストレスがたまりますよね。お母さんは買い物に行きたいなど、何かしらの目的があって出かけようとするわけですから、それを止められると不満がつのると思います。

もちろん、外に出るということには必ずリスクが伴います。交通事故だけではなく、認知症の人は道に迷いやすいという問題もあります。ただし、さまざまな対策をしておくことで、リスクは減らせます。例えば、歩きやすい靴を履いてもらうことは転倒防止につながります。目立つ色の洋服を着てもらうことで運転手から見やすくなります。夜間や雨の日だけ、出かけるのをがまんしてもらうのも一つの対策です。

認知症の人の外出対策としては、各自治体でさまざまな取り組みをしているので、地域包括支援センターなどに相談して、利用するといいでしょう。例えば、キーホルダーに記された登録番号から氏名や連絡先を照会できる「見守りキーホルダー」、登録しておくと万が一にも行方不明になったときに地域で協力して探してもらえる「見守りネットワーク」などの取り組みがあります。居場所がわかるように高齢者にGPS端末を携帯してもらうことも役立ちます。たとえ迷ったとしても、自宅に帰ってこられるような環境をつくっておけるといいですね。

さらに、時間に余裕があり、タイミングがあえば、お母さんが出かけるときに付き添うことをおすすめします。何回かついていくうちに、どの道をよく通るのか、どの店によく行くのかなど行動パターンが見えてくると思います。危ない通りを歩くようなら、より安全な道を一緒に歩くようにして、それを習慣づけられるといいですね。よく行くお店のスタッフに「認知症なので1人で困っていそうなことがあれば本人に声をかけてあげてほしい」と伝えるほか、「困ったことがあれば連絡してほしい」と連絡先を渡しておけるとより安心です。

お母さん1人でも無事に帰ってこられるような環境づくりをしておけば、相談者の不安も軽くなり、お母さんを気持ちよく送り出せるのではないでしょうか。

【まとめ】過去に自転車と衝突事故を起こした認知症の母 1人で外出させたくないときには?

  • お母さんの行動はなるべく制限しない
  • 転倒や事故をできるだけ避けるための対策をとり入れる
  • 道に迷ったときの対策として、自治体の見守りサービスなどを利用する
  • 何回か外出につきそって、よく通る道や立ち寄る店を把握する

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