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認知症が心配なあなたへ

不眠と心と認知症の関係 気にするほど発症リスクは高くなる

不眠から認知症になるのではないかと心配「寝不足だ・・・」「会議はじまりますよー」「忘れてたっ!」

大阪の下町で、「ものわすれクリニック」を営む松本一生先生によるコラム「認知症が心配なあなたへ」。認知症になること、なったことに不安を抱えているあなたの心を和らげるような、認知症との向き合い方、付き合い方を伝授していきます。今回は、不眠から認知症になるのではないかと心配する人に対するアドバイスです。

自分や家族が認知症になるのではないか、毎日のように気になるあなた、しっかりと睡眠はとれていますか。気持ちが高じている時には、何かと睡眠と覚醒のリズムが悪くなることが多いのですが、心配しているだけではいけません。どういった点に気をつければよいか、今回は考えてみたいと思います。

認知症が怖くて、気になることだらけの日々

今年は、ここ数年の天候の不安定さの中でも、とりわけ日々の温度差が激しく私自身には感じられました。すでに大きな台風もやってきていて、いつもの年と比べて「ゆっくりと秋が深まるのを楽しむ」どころか、あっという間に季節が変わっていっているような気がします。

天候変化がどの程度まで影響しているかは推察に過ぎませんが、温度差や気圧の変動が激しいと、自律神経系の調整がうまくいかず、ふらつきや胃腸の調子の悪さ、そして睡眠リズムの乱れなど、いろいろな訴えが増えてきます。とくに夏の終わりからは不眠を訴えてくる人が多く、眠れないためか、次の日に「うっかり忘れが増えた」と言って医療機関を受診する人もいます。

不眠にもいろいろある

「眠れない」という訴えには、メンタル面の病気によるもの、例えばうつ病の人が夜中に何度も起きてしまう中途覚醒や、精神症状から眠ることが全くできなくなるようなものもありますが、ボクの診療所の外来診療に訴えてくる人の多くは、「先生、眠れなくなって、次の日に忘れることが増える。これが認知症になる兆しなのでしょうか」と言ってこられます。このように「次の日のことを考えると、寝なければいけないと思い、寝ようとするほど眠れない」というパターンの不眠は神経性不眠といって、寝ようとするときには眠りにくいけれど、一度眠りにつけばあとは寝ていられる状態です。本人が「寝ていない」と主張する割には、周囲の人に状況を聞くと「いびきをかいて寝ていますよ」といった返事が返ってくるもので心配はありません。

不安とのつきあい

不安とうまくつきあっていこう

人間は「不安」という要素を持つことによって、しっかりとあることを成し遂げることができます。ボクもこの原稿や論文を書くとき、「締め切りに間に合わせなければならない。でも、書けなかったらどうしよう」という不安を払拭(ふっしょく)しながら日々の生活を送っています。だから不安が全く無くなるような世界では、むしろ物事をしっかりと成し遂げることができません。言いかえれば不安はしっかりと生きる上で大切な心理的要素なのです。しかし不安であり過ぎると、自律神経のバランスが乱れ、血圧が乱高下して血管性認知症の原因となる可能性があります。

「眠れない日があり、物忘れをすることにも気づき、その不安から体調を崩した人」と、「不眠があるけれどさほど不安にならずに過ごした人」との比較を、ボクはかつて診療所でおこなったことがあります。それぞれ50人ずつ、不眠を訴え、かつ認知症を心配して来院した人々です。その後の2年間の経過を見たところ、心配になって自律神経が乱れた人のほうが、不眠はあっても不安にならずに過ごした人よりも、明らかに認知症になる人が多くいました。心配し続けた人の11人がその後、認知症になったのに比べ、不眠があっても気にせずに過ごせた人で認知症になった人は1人でした。気にしすぎることで自律神経の交感神経を刺激し続け、脳の血流が悪くなるのでしょうか。科学的な検証はできていませんが、診療所のデータとしては大きな差が出ました。

でもね、「気にしなければ良い」といっても、不安という感情はコントロールが難しいのです。もし、自分一人でコントロールしにくいと感じたら、メンタルクリニックや臨床心理士などに相談してみるのが良いかもしれません。

普段から心掛けるべきこととしては、睡眠が気になって不安があったとしても、自律神経が乱れるほどに体調を崩さずにすめば認知症にはなりにくいということを知って、自分の不安感と上手につき合うことが大切なのではないでしょうか。

次回は「これまで当たり前のようにできていたことができなくなる」について考えます。

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