老人ホームに入ったら母の認知症が進行　自宅に帰すべき？【お悩み相談室】

2022.11.18 構成／中寺暁子

介護支援専門員の須原智子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q．一人暮らしの母（81歳）が初期の認知症と診断され、何かあってからでは遅いと思い、有料老人ホームに入居しました。面会に行ったら認知症が一気に進んだ印象があり、「帰りたい」と泣かれました。まだ初期ですし、自宅に戻すべきか悩んでいます（54歳・男性）

A．有料老人ホームは、サービスの内容や入居者の要介護度などがさまざまです。食事などの生活支援や介護が充実しているホームだと、本来は自分でできるはずのことまで、サポートを受けてしまうかもしれません。また、要介護度が重い入居者ばかりのホームだと、ほかの入居者とのコミュニケーションがとりづらい状況になってしまいます。やるべきことがない、話し相手もいないという環境では、認知症が一気に進んでもおかしくはありません。

認知症と診断されたからといって、すぐに一人で生活できなくなるわけではありません。「何かあってからでは遅い」と思われたということは、お母さんは一人暮らしでも、まだ問題は起きていなかったと考えられます。何よりお母さん自身が「帰りたい」と思っているので、できることなら自宅に戻してあげたいですよね。

ただし、認知症が一気に進行したとのことなので、今のお母さんは一人暮らしができる状態なのかどうか、見極める必要があります。すぐに退居するのではなく、1週間程度外泊という形で自宅に戻り、相談者やほかの家族が一緒に過ごしてみて、お母さんが一人暮らしをするうえで支障があるかどうかを確認してはいかがでしょうか。たとえ支障があったとしても訪問介護（ホームヘルプ）や通所介護（デイサービス）など、居宅サービスでカバーできる範囲であれば、一人暮らしは可能です。

自宅に戻ることを検討した結果、やはり老人ホームではないと難しいということであれば、要介護度がお母さんと同程度の入居者が多い、自立した生活を支援してくれるといったことを意識して、入居するホームを再検討し、転居するのも選択肢の1つです。

もしかしたらお母さんは認知症が進んだわけではなく、ホームに入居したことで一時的に症状が出ているだけかもしれません。この場合、自宅で暮らせばもとに戻る可能性があります。お母さんが望むのであれば、できる限り自宅で過ごしてほしいと思います。