共に生きる 認知症セミナーにて
こんにちは、若年性認知症当事者のさとうみきです。
今年も9月の世界アルツハイマー月間にオンラインセミナー『「共に生きる」認知症を考えるセミナー~“Talk with”みんなで話そう~(SOMPOホールディングス主催)』のパネリストとして、お招きいただき、参加させていただきました。
今回は夫と一緒にパネルディスカッションに登壇ということもあり、
ひとりでのときよりも、とても変な緊張感がありました。
そんな緊張感をほぐしてくださったのが、
Facebookなどで以前からつながっている、
SOMPOの社員のみなさまや出演者のみなさまでした。
そして、
ファシリテーターの町永俊雄さん。
町永さんとは、念願かなってご一緒での活動となりました。
と、言うのも
わが子は、生まれつきの発達障害との診断を2歳で受けていました。
たくさんの方々の支えを受けながら、大学生になり、
ときどき悩みながらも、いまでは成人として立派に成長しています。
そんなわが子の子育てで大変だったとき、
NHKの福祉キャスターを務められていた町永さんは、
わたしにとって、画面越しでしたが、発達障害の子育てについて、
優しくてあたたかい語り口調で、大切な学びの時間を与えてくださる、憧れの方でした。
のちに、NHKを退職された町永さんは、
現在は福祉ジャーナリストとして多方面でご活躍なさっています。
オンラインセミナーの当日、会場に到着すると、
子育て中に画面越しにお世話になった町永さんが、目の前にいらっしゃいました。
「あ、福祉キャスターの町永さんがなんで……」
そんな驚きがありましたが、
緊張感でごあいさつを交わすのが精一杯でした。
わが子の発達障害、
そして今度は、わたしの認知症で、町永さんから学びをいただく……。
勝手に“何かのご縁かしら”、
そんな風に感じており、初対面の実現に本当にうれしい気持ちでいっぱいでした。
パネルディスカッションの本番も緊張したり、言葉に詰まったりしたわたしを
さりげなくフォローして包み込んでくださるのです。
そして、
他にも待ち時間の待機時間中には、
SOMPOさんの社員でもあり、Facebookでもつながっている方々が、
明るく、まるで女子会のような時間が流れました。
認知症の本人には「脳疲労」があるため、
わたしは今年に入ってから、講演会などの事前の打ち合わせの際には、
そのことを伝えさせていただき、
なるべく休憩スペースを設けていただくようお願いしてきました。
これは、いまのわたしに必要なことですが、
これから後に続く認知症のご本人のためにも理解していただければと思い、
万全の態勢で本番に臨めるような環境作りとして、
あえてお伝えすることを心掛けてきました。
そしてこのセミナーの当日は、休憩スペースとして、
モデルハウスのようなお部屋を利用させていただくことができ、
布団付きのベッドもご用意くださいました。
今回はなかまぁるの編集部の方々が、企画運営にも携われていて、
「脳疲労」には甘いものと、おいしいバウムクーヘンも差し入れしてくださいました。
このように皆さんのお気遣いの中で、
緊張もしましたが、
楽しく無事に初の夫婦での登壇を終了することができました。
みなさま、運営、企画、当日の準備などたいへんお世話になりました。
今、わたしが安心して活動できているのは、
まだまだ、認知症に対して偏見のある社会の中で、
ご本人が声をあげるという活動を、先輩のみなさまが築き上げてくださったからです。
わたしは、切り開かれた道をゆっくりゆっくりと歩ませていただいています。
わたしは活動する上で心がけていることがあります。
ときには焦ってしまい、早歩きや突っ走ってしまうことで、疲れてしまうこともありますが、ふと立ち止まり、冷静に自分のペースを考えるとともに、
仲間にも気をかけられる存在でありたいと思っています。
今のわたしができること。
目の前にある頂いた活動を認知症のご本人とご家族の笑顔につなげられるように、
わたしは各地をまわり、
たくさんのご本人と手を取り合って仲良く活動をしていきたいと思います。
わたしが活動をすることで、
わたしだけではなく、他の認知症のご本人の活動がしやすい社会になっていければいいなと思います。
今後も、登壇などをご依頼いただいたみなさまには、
認知症の当事者の目線で、さまざまなことをお願いさせていただくこともあるかと思います。
未来の認知症になられるご本人のためにも、ご理解とご協力をお願いいたします。
今回はセミナーを通してたくさんの気づき、出会い、学びがありました。
わたしはまた、前を向いて一歩一歩。
そして一日一日を“今を大切に”生きていきたいと思います。