凍った関係の介護する人される人 ヘルパーの存在が雪解けを促す
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
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父とは、
心を通いあわせたことなどない。
親子の関係を修復できないまま、
在宅介護の日々が、始まった。
長年の凍った関係は、
今さらどうにもならない。
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そんなある日、
訪問介護ヘルパーさんの声が聞こえた。
私には、握ることができない父の手。
私には、かけられない言葉。
それでも父は、私に笑っているようで。

私の心のなかの冷たい氷が、
ほんの少し溶けていく。
明日もヘルパーさんは来る。
いつかなにかが変わるかもしれない。
円満な家族関係で育った人など、
どれだけいるのでしょうか?
多くのご家庭では
介護をする人も介護を受ける人も、
大きさの違いはあるものの
互いに痛みを抱えたまま、
在宅介護を続けていることでしょう。
そんな閉じられた家のなかに、第三者として入っていく、
訪問介護ヘルパーは、
介護を受ける人とだけのマンツーマンの関係性にあると、
誤解されがちです。
けれど実際の立ち位置は
「ご家族と介護を受ける人のあいだ」
というのが、私の個人的な体感でした。
なので、訪問介護ヘルパーが、
ご家族間のつながりに配慮するのは、
自然な成り行きでしょう。
その家族の独特の距離感や、会話の機敏を、
個々のヘルパーが少しずつ察していった後、
訪問介護チーム内に共有してゆくという流れが通常です。
そのぐらい、家族というものは
1度2度、話を聞いたぐらいでは内情はわからず、繊細です。
かといって、訪問介護ヘルパーが家族関係の修復など専門外に違いありません。
それでも、
訪問介護ヘルパーという第三者が
家という閉じられた空間の、
小さな窓になり得る可能性を
ここに記しておきたいと思います。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
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