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アンガーマネジメントから始まるケア

怒りの裏側の感情 怒りっぽく見えて実は寂しい?【アンガーマネジメントから始まるケア(5)】

あなたの怒りの裏側には、何が隠れていますか?

自分が怒っているときでも、相手が怒っているときでも、その背後にある感情に気づくことで、無用なトラブルや不快感を避けることができるかもしれません。「怒りの背後にある感情」について、横浜市立大学医学部看護学科講師の田辺有理子さんと一緒に考えてみましょう。(なかまぁる編集部)

隠れている感情を見つけ出そう

怒りという感情は、それ単独で生じることはなく、何か別の感情と連動しています。自分が怒っているとき、あるいは怒った相手に対峙しているとき、その背後にある別の感情に気づくだけで、その怒りに対処するヒントが見つかることがあります。

怒りの背後には別の感情があります。例えば、「不安」「苦しい」「痛い」「疲れた」「寂しい」「虚しい」「悲しい」「悔しい」などです。人の感情に良いも悪いもないのですが、どちらかといえばマイナスのイメージを持つことが多いようです。感情をどう定義するかについてはまたの機会として、今回は感情の他に気分、気持ち、思考なども織り交ぜて紹介します。

怒りに対処するヒント

介護や医療の現場には、怒りが生じやすい状況があります。身体の不調、病気や治療への不安、痛み、苦痛、介護施設や病院で大部屋に入れば同室の人への気苦労があるかもしれません。そんな時にちょっとしたきっかけで怒りが爆発してしまうことがあります。一見するとクレーマーと思うような人でも、少し違う角度から見ると、体調がすぐれない、夜眠れなかったなど、怒りっぽくなっている要因が背後に隠れているかもしれません。

怒りっぽく見えて、実は寂しくて気にかけて欲しいという人もいます。文句ばかり言われたら、あまり関わりたくないと思いますが、ちょっと雑談してみたら、意外と話しやすくなることがあります。

時々「お前じゃ話にならん。責任者を呼べ!」と職員に詰め寄るような怒り方をする人を見かけます。その場で対応している職員が一番事情を分かっているのに、「責任者と話をさせろ!」と言うのです。ケア、治療、検査、処置、説明、接遇など、訴えの内容はさまざまあると思いますが、その怒りの裏側には「自分を尊重して欲しい」という気持ちが隠れているかもしれません。特別待遇をする必要はありませんが、場所を変えたり、普段の対応に一言添えるだけで満たされる場合があります。

怒りの背後に目を向けることで、別の感情が見えてきます。それが怒りに対処するヒントになります。

Getty Images

感情を意識して言葉をかけよう

育児の場面ではどうでしょうか。怒っても、その背後にどんな感情があるのかを上手に表現できないことがあります。子どもは、言葉で表現できずに物を投げたり、暴れたり、暴言を吐いたりします。そこに隠れている感情を表現できるように促してみましょう。

「お友だちにからかわれて悔しかった」

「失敗して恥ずかしかった」

「一人で寂しい」

「甘えたい」

といったことかもしれません。

「物を投げちゃダメ!」と言うだけでなく、「おもちゃを投げられたら痛い」「大事にしていたコップが割れてしまって悲しい」と感情を言葉で表現していくと、お子さんにも伝わっていくと思います。

自分の感情にも意識を向けよう

介護や医療、育児の場面で、怒りに隠された感情を捉えることができるようになると、相手の怒りに対処するヒントがみつかる場合があります。これは自分自身の怒りについても同様です。自分が怒っているとき、その背後にある自分の感情に気づかないことがあります。相手の怒りの背後を探るだけでなく、自分の感情にも意識を向けてみましょう。

介護や家事や育児で大変な状況をねぎらって欲しいとか、私が頑張っていることを誰かに認めて欲しいとか、あの人がうらやましいとか、自分の感情に気づくだけで怒りっぽい状況に何か変化があるかもしれません。また、怒りは身体の状態とも連動しているので、寝不足や疲れ、空腹などが隠れていたら、生理的な欲求が満たされることで、すっきりするかもしれません。

あなたの怒りの裏側には、何が隠れているでしょうか。

次回は、「怒る基準を持とう」をテーマに考えていきます。

【終了しました】田辺有理子さんを講師に招き、セミナーを開催します

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田辺有理子(たなべ ゆりこ)
横浜市立大学医学部看護学科講師
精神看護専門看護師、保健師、精神保健福祉士、公認心理師
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会アンガーマネジメントファシリテーター(R)
看護師として大学病院勤務を経て、2006年より大学教員として看護教育に携わり、2013年より現職。医療・介護・福祉分野を中心に、介護ストレス、虐待防止などに関して、アンガーマネジメントやメンタルヘルスなどの研修、情報発信を行っている。
単著「イライラとうまく付き合う介護職になる! アンガーマネジメントのすすめ」(中央法規出版,2016)、「イライラと賢くつきあい活気ある職場をつくる 介護リーダーのためのアンガーマネジメント活用法」(第一法規,2017)、「ナースのためのアンガーマネジメント 怒りに支配されない自分をつくる7つの視点」(メヂカルフレンド社,2018)、「怒った人に振り回されない自分をつくる ナースのためのアンガーマネジメント2」(メヂカルフレンド社,2022)、共著「精神に病をもつ人の看取り:その人らしさを支える手がかり」(精神看護出版,2021)、雑誌「介護人財」(日総研出版)で2021年5月から「ゆりこ先生のちょっとこころを軽くする話」を連載中。

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