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今日は晴天、ぼけ日和

「ひいおじいちゃんの部屋はおしっこの臭いがする」子どもへの命の伝え方

《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》

「お父さんご飯よ、口開けて」

ひいおじいちゃんの部屋は、
オムツやおしっこの臭いがするし、
変な声もする。 

だから僕は、その部屋が好きじゃない。 

でも、おばあちゃんが一緒にいる時は
ドキドキのぞいちゃう。

「あー」「あー」

ひいおじいちゃんは
ご飯をボロボロこぼすから、
僕はソワソワする。 

ひいおじいちゃん、怒られないかな? 

でも、おばあちゃんは、
いつもと変わらないから、
別にいいんだ、と思った。

ひいおじいちゃんと僕

ひいおじいちゃんは、
僕をみると時々笑う。 

ちょっとだけ、
口がゆがむから、分かる。 

話したこともないけど、
ひいおじいちゃんは、
僕が大好きみたい。 

「娘に命の大切さを知ってほしくて
寝たきりの祖父に会わせたら、
泣いて怖がって、
逆効果になってしまった。
確かに私も、とても怖かった」

以前、ある人から伺った話です。
なぜ逆効果になってしまったのか。

子どもは敏感です。 

介護されるその人だけでなく、
周りにいる自分の親や大人が
どう接するのかを見ています。

最期を迎える人を、
周りはどんな目で見ているのか。

それこそが子どもの心に焼き付き、
命の経験になるのではないでしょうか。

「子どものころ、精神疾患のある家族がいたんです」
「私自身がヤングケアラーだったので」

介護や看護を生業にする人から、
かなりの頻度で聞く話です。 

三食ちゃんとご飯が並んだり、
夜はぐっすり眠ったり、
たまには家族で旅行に出かけたり。

そんな普通の時間さえ、
子どものころから整いづらい環境だったことでしょう。

それでもケアという営みには大切な価値がある、と
困難の多い環境からなにかをつかんで、
一生の仕事に選んだ。

命に関わるということを、どう伝えていくのか。
私たち、大人には重要な役割があると思います。

《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》

前回の作品を見る

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