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これって虐待? 認知症の母に意地悪をしてしまった【お悩み相談室】

悩むひと、Getty Images
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地域包括支援センターでセンター長を務める由井洋子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の母(82歳)と2人で暮らしていますが、どうしても母にやさしくできません。手を出すわけではないのですが、意地悪なことを言ったり、わざと音をたてて部屋のドアを閉めたりしてしまいます。これって虐待でしょうか(51歳・女性)

A.私が勤務する地域包括支援センターでも、よく受ける相談内容です。相談者が抱えている悩みは、特別なことではありません。こうして相談してくださって、よかったと思います。

家族を介護するということは、理論通りにいかず、いつも心穏やかでいるのは難しいことですよね。特に認知症の場合、以前のお母さんとは違ってみえる面もあり、子どもとしては受け入れるまでに時間がかかりますし、病気のせいだとわかってはいても、うまく対応できないものです。

虐待というと、手を出す「身体的虐待」のイメージが大きいですが、意地悪なことを言ったり、大きな音を立てたりして相手を怖がらせるようなケースは、「心理的虐待」に分類される可能性があります。虐待にはほかにも「経済的虐待」「介護・世話の放棄・放任」「性的虐待」があり、五つの種類があります。心理的虐待は周囲からはわかりにくく、放置すると身体的虐待などほかの虐待にもつながって、事故が起きてから発覚するという場合もあります。

相談者のケースが虐待にあたるかどうかは、頻度や程度にもよるのでわかりませんが、私の経験上わかるのは、このまま放置するのはよくないということです。

相談者には、ぜひ他人の力を借りてほしいと思います。まだ介護保険サービスを利用していなければ、要介護認定を受けて、デイサービスやショートステイなどを利用することをおすすめします。介護保険サービスの目的は、本人のためだけではなく、介護者の休息でもあるのです。お母さんがいない時間は、趣味の時間にあてたり、友人と会ったりしてストレスを軽減できるといいですね。

また、認知症に対する理解を深めることも大事です。お母さんにストレスを与えるような言動は、認知症の悪化にもつながり、さらに相談者の負担が大きくなることもあります。負のスパイラルに陥らないために、地域包括支援センターなどが開催している認知症の講習会などで、認知症の人への対応の仕方などを学ぶのはいかがでしょうか。家族会などで、同じ経験者から対応についてアドバイスをもらうのもいいと思います。

気軽に介護保険サービスを利用して、少しでも他人の力を借りられるといいですね。

【まとめ】認知症の母に意地悪なことをしてしまいます。これって虐待?

  • 介護保険サービスを利用して、お母さんにデイサービスやショートステイなどに通ってもらっている間に、休息の時間をもつ
  • 地域包括支援センターなどが開催している講習会に参加し、認知症について理解を深め、対応などについての知識を得る

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