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認知症に理解を示す隣人 でもやたらに火事を心配します【お悩み相談室】

火災報知器、Getty Images
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地域包括支援センターでセンター長を務める由井洋子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.母(77歳)が認知症になり、昔から家族ぐるみで仲良かったお隣さんにも伝えました。「できることは協力する」と言ってくれたのですが、火事についてやたらと心配してきます。どうすれば安心してもらえるでしょうか(45歳・女性)

A.地域包括支援センターでも、こうした火事に関する相談をよく受けます。確かに火事は、自宅だけではなく近隣に大きな迷惑をかけてしまうことになるので、心配ですよね。

火事を防ぐ対策としてよくとり入れられているのが、ガスコンロから電磁調理器(IHクッキングヒーター)に換えることです。また、認知症の人が家で1人になる時間は、ガスの元栓をしめるという方法もあります。

本人がすでに料理できない、もしくは料理をしたがらないということであれば、こうした方法で火事を防げますし、隣人も安心するでしょう。ただ、お母さんに料理をしたいという意欲があれば、できるだけ続けてほしいと思います。

認知症の人が新たに電磁調理器の操作を覚えるのは、難しいことです。電磁調理器に換えたのをきっかけに、操作がわからなくて料理をしなくなってしまうのは、お母さんにとってはどうでしょうか。

以前経験したケースでは、家族が火事を心配してガスの元栓をしめたところ、本人が卓上コンロを買ってきて料理をしていたということがありました。料理をしたいという意欲がある人は、何かしらの方法で料理をしようとするんですね。料理をすることは認知機能を維持する可能性があるので、メリットも大きいのです。

火事が心配なのは、お母さんが家に1人でいる時間です。要介護認定を受けているのであれば、日中1人になる時間にホームヘルパーに来てもらい、一緒に料理してもらうのはいかがでしょうか。近隣の人にもホームヘルパーが定期的に訪問することを伝えておくと、安心してもらえると思います。

もちろん万が一火事が起きた場合に損害を最小限に抑えるために、火災報知機を設置する、難燃性のカーテンやじゅうたんを使用するといったことも大事です。

認知症が進行すると、料理をするのが難しくなるときがきます。そのタイミングであれば、電磁調理器に換えてもいいかもしれません。お母さんが1人でいるときの食事は、ホームヘルパーに作ってもらったり、配食サービスを利用したりすることができます。

隣人は「できることは協力する」と言ってくれているので、ぜひ協力してもらうといいでしょう。「週に数回様子を見に行ってもらう」など、近隣のサポートはケアプランに盛り込むこともできるのです。見守りはケアマネジャーから近隣の人に依頼してもらうこともできます。

もしかしたら、隣人は今のお母さんの様子がわからず、認知症と聞いて漠然と不安になっているのかもしれないですよね。お母さんの見守りをしてもらうことで、状況がわかれば漠然とした不安は解消されるかもしれません。

【まとめ】認知症の母が火事を起こすのではないかと、隣人が心配してくるときには?

  • お母さんがすでに料理できない、もしくはしたがらないのであれば、ガスコンロから電磁調理器に換えたり、ガスの元栓をしめたりする
  • お母さんが料理できる状態で、意欲があれば、家で1人になる時間帯にホームヘルパーに来てもらい、一緒に料理をしてもらう
  • 万が一火事が起きたときに備えて、火災報知機を設置する、難燃性のカーテンやじゅうたんを使用するなど、損害を最小限に抑えるための対策をする
  • 隣人にもお母さんの見守りに協力してもらう

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