歯科クリニックでのカミングアウト後の心地良さ
こんにちは、若年性認知症当事者のさとうみきです。
今回は15年以上悩まされていた歯科に関することについてお話をさせて頂きます。
小さい頃からちゃんと歯磨きはするものの、定期的に虫歯に悩まされてきました。
歯科クリニックはたくさんあるものの、なかなかしっくりきませんでした。
そんな時、人づてに、ある歯科クリニックを教えてもらいました。
それからは、家族全員! いや、今は父までがお世話になっております。
昔、「息子が発達障害で歯医者さんが苦手なんてす……」
と、お伝えしたときも
顔色ひとつ変えないどころか、ギャグ的な笑いで母であるわたしを和ませてくれました。
障害児の親はなぜか、病院などでも申し訳なさを感じてしまうものです。
しかし、笑いある会話のセンス、そして歯科医の先生のお人柄にホッとさせて頂きました。
最近、“犬友”でもあったクリニックのスタッフの方に、わたしが認知症と診断を受けていることを伝えました。
Facebookを見て、わたしの活動なども理解してくださり、歯科医の先生たちに共有して下さいました。
ある日、わたしがクリニックの診察台に上がるとき、
一瞬、お尻から座るのか、足を乗せてからなのかアタフタしたときがありました。
そんな時も
「大丈夫ですか〜」と、笑みを浮かべて普通に接して下さるんです。
あるときは、靴のまま、座っていい診察台なのですが、
間違えて靴を脱いだときも「お行儀が良いですねー」
と、本当にさりげないツッコミで笑わせてくれます。
歯科クリニックには、歯の治療に行っているのだけど、
なぜか、心まで元気になって帰ってこられるのです!
以前、わたしが大学病院の研究チームの検査に参加しているとき、
口腔内(口の中)のことについて指摘を受けたため、
「徹底的に治療を願いします!」と頼みました。
そうしたことにも対応しながら、治療して下さいました。
治療の終わりが見えてきた頃、こんなことを尋ねてみました。
「先生のクリニックにも認知症の患者さんがきて、何かトラブルとかありますか?」
「うちのクリニックには“愉快な認知症の患者さんたち”が来ていますが、トラブルにはならないですよ」
そうか!
もしかしたら、なんらかの理由で患者さんがパニックになってしまうこともあるのかもしれませんが、
この温厚な先生とスタッフのみなさんは、“愉快な患者さん”として、接しておられるのだと思いました。
例えば、子どもが泣いたり、叫んだりするのは当たり前と思うのと同じように、
この患者さんにはこんな背景があるのだから、それは当たり前のこととして、受け止めておられるのだと感じられました。
わたしは、若年性認知症であることをカミングアウトすることで、
スタッフの方が、前日や当日にリマインドの連絡をくれるようになりました。
何か事情があれば、気にかけてくださる。
物理的な意味だけでなく、本当の意味でのバリアフリーな歯科クリニックだと改めて感謝しています。
認知症があっても障害があっても
ちょっとした気遣いで、こんなにもスムーズで、苦手だった歯科クリニック通いさえ、楽しいと思えるようになるのです。
他の認知症当事者の方などから、歯科クリニックでのトラブルについても、たまに耳にします。
いつもの歯科で、たまたま混乱してしまったところ、警察が来たなど…。
どうして……。
なぜ、保険証もあり、いつも来ている患者さんなのに、
そのパニックの背景に気を配ろうとせず、警察を呼んでしまうのか…
まだまだ、医療従事者の中にも間違った見方や偏見などもあると思います。
これからどんどん高齢社会になる日本。
様々な診療科の医療従事者のみなさまにも
認知症のさまざまな症状などを改めて知って頂きたいと思いました。
わたしが通っている歯科クリニックのような歯科、病院が増えることを願っています。