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解決!お金の困りごと

入居一時金は0円~数千万円 損しないための有料老人ホームのお金の話

有料老人ホームの支払い 入居一時金方式と月額利用料方式 どっちがお得? 専門家が解説

有料老人ホーム選びをしていると、サービス内容の多様さだけでなく、支払い方法にも様々なものがあることに気づかされます。主たるものに「入居一時金方式」と「月額利用料方式」がありますが、どちらがお得なのでしょうか? どのような点に注意して選べば良いのでしょうか? 架空の朝日太陽さんのエピソードをもとに、有料老人ホームに入居する際の支払い方法について解説します。アドバイスしてくださるのは、シニアライフに必要な情報を提供する株式会社ベイシスの「介護の三ツ星コンシェルジュ編集部」の荒牧誠也編集長です。

【今回のエピソード:入居一時金 0円~数千万円 なぜ、こんなに差があるの?】
東京で働く朝日太陽さん(52)は、地方の自宅でひとり暮らしを続けるのが難しくなってきた母の月子さん(80)が入居する有料老人ホームを探し始めました。いくつかの有料老人ホームからパンフレットを取り寄せたところ、入居時に必要なお金が、0円~数千万円と大きな差があることに気づきました。なぜ、こんなに差があるのでしょうか? また、入居時に一時金を支払う「入居一時金方式」と、一時金は支払わずに月額利用料だけを支払う「月額利用料方式」があることが分かりました。どちらにすれば良いのか判断できず、頭をかかえてしまいました。

*様々な高齢者の住まいの種類については、2022年5月2日の記事「種類が多すぎて分からない! 高齢者向けの住まい 専門家が選び方を解説」をご覧ください。

備えのためのアドバイス:入居一時期の償却期間と償却率を考慮して

そもそも、有料老人ホームにおける「入居一時金」とは何なのでしょうか。

有料老人ホームの多くは「利用権方式」という契約システムを採用しています。利用権方式は、有料老人ホームを終身的に利用する権利を取得するシステムです。このために、居室を利用するための家賃相当額やサービス費などの対価の全額または一部を入居時に前払いするのです。それが入居一時金です。

一般的に、有料老人ホームの費用の総額は、利用者がそのホームで過ごすと思われる期間を想定して金額が設定されます。

全額を入居一時金として前払いした場合は、想定していた期間を超えて過ごすことになったとしても、それ以上のお金は請求されません。長生きすればするほどお得になると言えるでしょう。

一部を前払いする場合には、入居一時金が高額になるほど、月々に支払う月額利用料の負担が軽くなります。

また、入居一時金の特徴として、償却期間と償却率が設定される点があります。

入居契約時に10~30%程度が初期償却され、残りの金額を5年から、長い場合では15年ほどかけて月単位で償却していくことが多いようです。

償却年数が残っている段階(たとえば償却期間が5年なら、5年未満)で退去すれば、未償却分のお金が戻ってきます。入所から時間が経てば経つほど、退去時の返還金は減っていき、償却期間が終了したあとでは返還金はゼロになります。

一方、入居一時金がない「月額利用料方式」もあります。この方式では、利用権の対価を前払いするのではなく、月額利用料として、月々で払っていきます。入居時にまとまった金額を用意する必要はありませんが、その分、月額利用料は高めになります。

「今後どのくらい利用するか」がポイント

最近はさまざまな支払い方式を用意している有料老人ホームが増えています。入居一時金方式と、月額利用料方式のいずれも用意されていたら、どのように選べばいいのでしょうか。

まずは、現在の親(入居者)の年齢や状態から「あとどれぐらい有料老人ホームで過ごすのか」を考えることが重要です。たとえば、がんなどの病気がない80歳の方なら、あと10年以上はホームで過ごせるだろうと考えるのが妥当でしょう。それを踏まえて、入居一時金、償却期間、償却率に基づき、入居期間に応じてシミュレーションします。それを、同じ入居期間の場合、月額利用料方式で月々支払うことになる総額と比較をしてみるとよいでしょう。

私が相談を受けた経験では、90歳を超えている人の場合は、入居一時金方式が選ばれることはほとんどありません。

また、入居時にまとまったお金を用意するのが難しい場合や、数年内に特別養護老人ホームや介護医療院などほかの施設に移る可能性が高い場合も、月額利用料方式を選択したほうがいいでしょう。

入居一時金方式はあまり馴染みがない有料老人ホーム特有のシステムなので「大金を一度に払うのは怖い」と感じ、月額利用料方式を選びがちです。けれど、高額な月額利用料を払い続けていくうちに、結局は、支払った総額でみると、入居一時金方式のほうがお得だったということもしばしばあります。しっかりとシミュレーションをしておきましょう。

サ高住は賃貸住宅 「敷金」が必要なところも

サービス付き高齢者住宅は賃貸借契約で、敷金が必要になることがある

一方、サービス付き高齢者住宅(サ高住)は、通常の賃貸住宅と同じように賃貸借契約を結んで月々の費用を支払う「月払い方式」が一般的です。入居時に「敷金」などがかかる場合もありますが、高くても数十万円程度のところが大半です。有料老人ホームの入居一時金と比べると安価な傾向にあります。敷金は一般的な賃貸住宅のように、退去時に一部が返還されます。

親の介護は突然やってくるので、いざとなると冷静な判断ができなくなる場合が少なくありません。また、有料老人ホームの営業マンや担当者はいいところばかりを強調しがちです。わからないところや、他との比較ができない点は、該当する有料老人ホーム外の専門家に相談することをおすすめします。お住いの自治体の地域包括支援センター、介護認定を受けている場合は担当のケアマネジャーのほか、民間の相談センターもあります。

いったん有料老人ホームに入居してしまうと、お金が切れたからといって在宅生活に戻るのは、介護する側にとっても、される側にとっても大変なことです。実際に払いきれるかどうか、将来どうなるかということも含めて、いろいろと相談したうえで決めるようにしてください。

荒牧誠也さん
荒牧誠也(あらまき・せいや)
株式会社ベイシス 取締役事業本部長、コラムサイト介護の三ツ星コンシェルジュ編集長。
1964年、大阪府大阪市生まれ。88年 関西電力株式会社入社。99年、介護事業子会社 株式会社かんでんジョイライフを設立。取締役として主に有料老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅、認知症対応型グループホームの開発・運営等に従事。2017年に関西電力を退社後、現職。

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この連載について

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