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心と財布にゆとりを 年金生活でも無理なく入れる有料老人ホーム探し

『年金、貯蓄』年金20万円 どう選ぶ?高齢の親が入所する有料老人ホーム 専門家が解説

収入は年金の月額20万円。そんな高齢の親の有料老人ホーム選びで、注意するポイントはどこなのでしょうか。架空の朝日太陽さんのエピソードをもとに、利用料の見方を中心に解説します。アドバイスしてくださるのは、シニアライフに必要な情報を提供する株式会社ベイシスの「介護の三ツ星コンシェルジュ編集部」の荒牧誠也編集長です。

【今回のエピソード:月額20万円の年金 入れる有料老人ホームはどこ?】
東京で働く朝日太陽さん(52)。母の月子さん(80)は、地方の自宅でひとり暮らしを続けてきましたが、要介護4になりました。太陽さんは「これ以上、母が自宅で過ごすのは心配」と思うようになりました。様々な有料老人ホームのパンフレットを取り寄せて、施設入所の検討を始めたものの、利用料はピンキリ。現在の月子さんの収入は、月額約20万円の年金のみです。無理なく入れるのは、どのくらいの利用料の施設なのでしょうか。

*様々な高齢者の住まいの種類については、前回の記事「種類が多すぎて分からない! 高齢者向けの住まい 専門家が選び方を解説」をご覧ください。

備えのためのアドバイス:利用料に含まれるものをよくチェックして

特別養護老人ホーム(特養)や介護医療院などの公的な施設は、介護保険で要介護度や部屋の形式などによって利用料が定められています。一方で、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅といった民間の施設は、自由に利用料を定められるため、その額にも大きな差があります。今回は、選択肢が多くある有料老人ホームへの入所を想定して、利用料を見る際のチェックポイントを解説したいと思います。

たとえば、月子さんと同様に年金を月20万円支給されているケースで、どのくらいの月額利用料の有料老人ホームに入れるかざっくり見積もってみましょう。まずは20万円全額をつぎ込んでしまうと、お財布だけでなく心にもゆとりがなくなっていまいます。お孫さんにプレゼントをあげたり、自分の楽しみのために使ったりする「余裕資金」を2万円くらいは確保しておきましょう。残りの18万円が「施設で介護を受けながら暮らすための資金」になります。

無理なく入所できる利用料を知るための計算式とは

月額利用料+介護費? 医療費? 諸雑費?  年金20万円 どう選ぶ?高齢の親が入所する有料老人ホーム 専門家が解説

施設のホームページには、月額の利用料として、家賃、管理費、食費を合算した金額が掲載されていることが多いです。「月額の利用料=毎月かかる金額」だと考えてしまいがちですが、実はこれ以外にも以下のような費用が発生することがありますので注意が必要です。

その1つ目は「介護サービス費」です。その施設が、介護保険法に基づく「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている「介護付き有料老人ホーム」の場合は、文字どおり、施設から直接介護サービスを受けることになり、公的介護保険が適用されます。この場合は、要介護度や所得などに応じて月ごとに定額の介護サービス費(公的介護保険の自己負担分)を施設へ支払うことになります。

指定を受けていない「住宅型有料老人ホーム」では、別途、介護事業者と契約を結び、使った介護サービスの内容や量に応じて介護サービス費を介護事業者に支払うことになります。

2つ目は「医療費(公的医療保険の自己負担分)」です。要介護の人は持病を持っている人も多く、訪問診療などを受ける場合が少なくありません。さらに年齢を重ねるにつれてさまざまな不調が出てくるので、医療費は増えていきがちです。

3つ目は「諸雑費」。とくに要介護度が重くなってくると、おむつなど消耗品の費用が増える傾向にあります。

これら3つの合計額として「5万円くらい」はかかると考えておきましょう。

つまり、ホームページなどに書かれている月額の利用料とこの5万円を合わせた金額が、毎月最低限、必要になるとみられるということです。

こうしたことから、収入が年金のみの月20万円のケースで、経済的に無理なく入所できる施設の目安は、
20万円−2万円(余裕資金)−5万円(介護サービス費+医療費+諸雑費の)=13万円
となり、13万円の月額利用料で入れる施設を探すことになります。

また、「預貯金があるから、それを足して少し利用料が高い施設に入りたい」という方もいらっしゃるでしょう。たとえば月額の利用料が2万円高い施設で暮らすには、1年で24万円、支払いが増えます。現在80歳なら100歳まで生きるとして20年分、つまり24万円×20年で、手持ちのお金が480万円あれば捻出できます。もっと長生きするなど実際の状況が変わっていくことはありますが、目安にしてください。

月額の利用料のほかに、有料老人ホームでは、入居一時金が必要となることが一般的です。この点も合わせて、預貯金額などを勘案しながら、施設を選んでいくことになります。

手ごろな利用料で入所できるホームも

有料老人ホームの中には、高額な入居一時金が必要なところもあり、お金がかかるというイメージが強く、「どうせ入れるわけがない」と諦めてしまいがちです。しかし近年は有料老人ホームもいろいろで、比較的安い入居一時金や利用料で入所できるところもあり、必ずしも高嶺(たかね)の花ではなくなってきています。

そうした手頃な有料老人ホームは、探せばけっこうあります。ただ、そういうところほど人気があって、あまり宣伝せずとも入所者が集まるので、なかなか表に出てきません。ケアマネジャーや有料老人ホームの紹介センターなどはさまざまな情報を持っていますので、相談をしてみましょう。

なお、有料老人ホームの入居一時金と比べて、サービス付き高齢者住宅の入居時の敷金は、低額な傾向があります。預貯金があまりない場合には、サービス付き高齢者向け住宅なども視野に入れて、高齢期に暮らす住まいを探すとよいでしょう。

まずは、親の身体とお財布の状況の把握が不可欠

要介護になった親が、入所する施設を自ら選ぶのは難しいものです。このため、子ども世代が親に適した施設を選ぶことになりがちです。その際に、必ずやっていただきたいことが2つあります。

まず、やっていただきたいのは、親の経済状況の把握です。払える額がわからなければ、施設選びへと進めません。お金のことは親子でもなかなか聞きづらいものですが、たとえば「最近、ガソリンの値段が上がったよね」といった世間話の中で、さりげなく年金の支給額などを聞いてみてください。毎月の収入がわかれば、そこから逆算して「毎月いくら支出が可能か(=どのくらいの利用料のホームに入所できるか)」を算出することができます。またできれば、預貯金などの財産についても聞いておくとよいでしょう。

そして、やっていただきたいことのもう一つは、親の身体状況を知ること。親に「どの医師にかかっているか」を確認し、親の状態をよくわかっているかかりつけ医に話を聞きに行くといいでしょう。かかりつけ医から「今はこういう状態で、将来はこうなりますよ」「この時期からはこのような介護が必要になる可能性が高い」といった話を聞くことができれば、それに合わせた内容の施設選びをすることができます。また、施設への入所を急ぐべきかなど、入所時期の計画も立てやすくなります。

太陽さんの場合は母の月子さんの身体状況が悪化し、要介護度も高くなり、必要に迫られて施設探しを検討し始めましたが、できればより早い段階から、たとえば半年に一回ほど、親の受診に同行し、かかりつけ医と顔なじみになって情報を得ておくのが理想的です。

荒牧誠也さん
荒牧誠也(あらまき・せいや)
株式会社ベイシス 取締役事業本部長、コラムサイト介護の三ツ星コンシェルジュ編集長。
1964年、大阪府大阪市生まれ。88年 関西電力株式会社入社。99年、介護事業子会社 株式会社かんでんジョイライフを設立。取締役として主に有料老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅、認知症対応型グループホームの開発・運営等に従事。2017年に関西電力を退社後、現職。

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この連載について

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