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クリスマスやお正月 プレゼントやお年玉は課税対象? 贈与税の基礎知識

クリスマスやお正月 プレゼントやお年玉は課税対象? 贈与税の基本

いよいよ、師走。クリスマスやお正月を前に、子どもや孫へのプレゼント、お年玉をどうしようかと考えている人もいらっしゃることでしょう。このように大人が子どもにあげる贈りものやお金について、「贈与税」がかかるかどうか考えたことはありますか?
一般的な金額であれば、贈与税が課されることはありません。しかし、非常に高額な場合には、贈与税が課される可能性があるのでご注意ください。贈与税の基本について、相続などに詳しい阿部由羅弁護士に、わかりやすく解説していただきます。

プレゼントやお年玉は贈与税の課税対象になる? 贈与税の基礎知識

一般的な金額(数千円から数万円程度)であれば、基本的には税金が課されることはありません。ただし、あまりにも高額になると「贈与税」が課される可能性があります。
まずは贈与税の概要と、贈与税が非課税となる条件について確認しておきましょう。

贈与税とは

贈与税とは、他人からもらった(贈与を受けた)財産について課される税金です。原則として、1年間に受けた贈与の総額から基礎控除額(110万円)を控除した金額(=基礎控除後の課税価格)に対して、贈与税が課されます。

贈与税額=基礎控除後の課税価格×税率-控除額

なお、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の方が、直系尊属(父母・祖父母など)から贈与を受けた場合は「特例税率」が適用されます。
その他の贈与の場合は「一般税率」が適用されます。

特例税率
一般税率

贈与税がかからない財産(非課税財産)

プレゼントやお年玉も「贈与」に該当しますが、すべての贈与について贈与税が課されるわけではありません。

以下の財産については、贈与税が非課税とされています(相続税法21条の3)。

(1)法人からの贈与により取得した財産
※ただし所得税・住民税の対象になる

(2)扶養義務者相互間において、生活費・教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち、通常必要と認められるもの
※離婚後の養育費など

(3)文化向上・社会福祉への貢献その他公益の増進への寄与が著しい公益目的事業(宗教・慈善・学術など)を行う者が贈与により取得した財産で、その事業の用に供することが確実なもの
※慈善団体への寄付金など

(4)学術に関する顕著な貢献の表彰として、特定公益信託から支給される一定の金品

(5)条例に基づき地方公共団体が実施する、心身障害者扶養共済制度に基づく給付金受給権

(6)公職選挙の候補者が、選挙活動に関して贈与により取得した財産上の利益で、公職選挙法の規定による報告がなされたもの

また国税庁の通達により、以下の要件を満たすものについては、贈与税を課税しないものとされています。

(1)個人から受ける香典・花輪代・年末年始の贈答・祝い物または見舞い等のための金品であること
(2)社交上の必要によるものであること
(3)贈与者と受贈者の関係等に照らして、社会通念上相当と認められるものであること

参考:相続税法基本通達21の3-9|国税庁

さらに、上記の非課税財産に該当しなくても、基礎控除(年間110万円)や以下の特例(詳しくは後述)によって、一定額までの贈与は非課税となります。

(1)教育資金贈与の特例
※30歳未満の方が、直系尊属(父母や祖父母など)から教育資金の贈与を受ける場合。最大1,500万円

(2)住宅取得等資金贈与の特例
※贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の方が、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受ける場合。省エネ住宅等の場合は最大1,000万円、それ以外の住宅の場合は最大500万円

(3)結婚・子育て資金贈与の特例
※18歳以上50歳未満の方が、直系尊属から結婚・子育て資金の贈与を受ける場合。最大1,000万円

お年玉はいくらから贈与税がかかる?

贈与税が非課税になる要件を踏まえると、お年玉は「社会通念上相当」な範囲内であるか、または基礎控除額の範囲内であれば非課税となります。

「社会通念上相当」な範囲内であれば非課税

お年玉は「社交場の必要による」「年末年始の贈答」に当たります。したがって国税庁の通達に基づき、贈与者と受贈者の関係等に照らして社会通念上相当な範囲内であれば、贈与税は課税されません。

「社会通念上相当」がどの程度の金額を意味するか明らかではありませんが、数千円から数万円程度のお年玉であれば、特に問題なく非課税になると考えられます。

また、「社会通念上相当」の範囲は「贈与者と受贈者の関係等に照らして」判断されます。
たとえば父母・祖父母などの非常に近い親族から受け取るお年玉は、そうでない人から受け取る場合に比べて、比較的高額であっても「社会通念上相当」と認められる可能性が高いでしょう。

基礎控除額の範囲内であれば非課税 ただし、お年玉の合計額に注意

1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の総額が110万円以内であれば、すべて基礎控除額の範囲に収まるため、贈与税は課税されません。お年玉が「社会通念上相当」な範囲を超えるとしても、基礎控除額の範囲内であれば、贈与税の課税を回避できます。

1人当たりの贈与額は基礎控除額(110万円)以内でも、複数の人から贈与され、その合計が基礎控除額を超えると、贈与税が課されてしまいます。

ただし、基礎控除額を超えるかどうかは、1年間の贈与の総額によって判断される点に注意が必要です。
たとえば祖父・祖母・伯父からそれぞれ100万円のお年玉を受け取った場合、1人当たりの金額は100万円でも、合計300万円の贈与を受けたものとして(基礎控除額を超えるため)贈与税が課されてしまいます。

なお、「社会通念上相当」と認められるお年玉の金額については、基礎控除額を超えるかどうかの判定対象から除外されます。

(極端な例ですが)たとえば1万円のお年玉を150人からもらった場合、贈与の総額は150万円となり、基礎控除額を超えるように思われます。しかし、各1万円のお年玉は「社会通念上相当」な範囲内と思われますので、判定の対象となる贈与額は0円となり、贈与税は課されない可能性が高いです。

現金以外のプレゼントやお年玉にも、贈与税が課税され得る

贈与税は、現金以外の形で受け取るプレゼントやお年玉にも課税される可能性があります。

(例)
・自動車
・不動産
・株式
・美術品、骨とう品
・ブランド物
など

現金以外の財産については、評価額をベースに贈与税が課税されます。これらの財産をプレゼントしたり、「お年玉」の名目で贈与したりする場合は、基礎控除額などを踏まえて、贈与税が課されるかどうかを事前にご確認ください。

高額なお金を子や孫に与えたいときに活用できる特例

贈与税には、教育資金、住宅取得、結婚、子育てに関するものなど様々な特例がある

入学・卒業・成人式・一人暮らしなどの節目に、いつもよりも高額なお金を子どもや孫に贈りたいと考えている方もいらっしゃるかと思います。

こうした場合は、贈与税の課税について、以下の特例を利用することをご検討ください。

教育資金贈与の特例

30歳未満の方が、直系尊属(父母や祖父母など)から教育資金の一括贈与を受ける場合、最大1,500万円まで贈与税が非課税となります。

教育資金贈与の特例の適用を受けるには、贈与された資金(またはその資金で購入した有価証券)を信託・預託している金融機関の営業所等を経由して、国税庁に教育資金非課税申告書を提出することが必要です。

なお、贈与を受けた年の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、教育資金贈与の特例の適用を受けることはできません。

参考:No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁

住宅取得等資金贈与の特例

贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の方が、直系尊属(父母や祖父母など)から居住用住宅の新築・取得・増改築資金の贈与を受ける場合、省エネ住宅等であれば最大1,000万円、それ以外の住宅であれば最大500万円まで贈与税が非課税となります。

住宅取得等資金贈与の特例の適用を受けるには、贈与資金の全額を住宅の新築・取得・増改築費用に充てたうえで、贈与を受けた年の翌年12月31日までにその住宅に住み始めなければなりません。
また、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、住宅取得等資金贈与の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書と添付書類を、納税地の所轄税務署に提出することが必要です。

参考:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁

結婚・子育て資金贈与の特例

18歳以上50歳未満の方が、直系尊属(父母や祖父母など)から結婚・子育て資金の贈与を受ける場合、最大1,000万円まで贈与税が非課税となります。

結婚・子育て資金贈与の特例の適用を受けるには、贈与された資金(またはその資金で購入した有価証券)を信託・預託している金融機関の営業所等を経由して、国税庁に結婚・子育て資金非課税申告書を提出することが必要です。

なお、贈与を受けた年の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、結婚・子育て資金贈与の特例の適用を受けることはできません。

参考:No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁

まとめ
プレゼントやお年玉は社会通念上相当な範囲内、または1年間の基礎控除額の範囲内であれば、贈与税の課税対象になりません。
また、贈与税の課税対象となる高額な場合であっても、各種の非課税特例を利用できる場合があります。
クリスマスや年末年始に子どもや孫へ高額なプレゼントやお年玉をあげる際には、贈与税の課税についても頭の片隅で考えておきましょう。

贈与税について執筆してくださったのは……

阿部由羅弁護士
阿部由羅(あべ・ゆら)
ゆら総合法律事務所 代表弁護士
西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。

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