遠くの国での戦争に過去を重ねる ほおを伝う近くの涙 心の声を聞いて
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
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誰かが泣いている。
声もなく、どこかで
戦争を嘆いて。
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誰かが一緒に泣いている。
助けを求める人の叫びを
遠くに聞きながら。
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ふさぎたくなる耳。
それでも私たちの心は、
誰かの声を聞きとろうと
いつも、いつも。
今日。
第2次世界大戦を幼いころに経験された、
高齢女性と話しました。
「つらい。また人が殺しあっている」
遠い国ではじまった戦争に、
涙をぽろぽろと流されていました。
私は返す言葉もなく、ただ聞きながら
自分も泣いていることに気がつきました。
それは、
凍った心が溶かされていくような体験でした。
戦争を知らない私たちは、
この始まってしまった戦争に
感情を押し殺しがちです。
日々の暮らしをこなすために、
自分の心や誰かを守るために、
必死です。
でも今、私たちは、
嘆き、涙を流すことも
時には必要ではないでしょうか。
人間らしい心を見失わないために。
傾聴とは。
誰かの心だけではなく、
自分の心に耳をすます行為なのかもしれません。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
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