認知症とともにあるウェブメディア

お悩み相談室

「好きにさせてくれ」MCIの父が引きこもっています【お悩み相談室】

犬と過ごすひと、Getty Images
Getty Images

社会福祉士の川島豊輝さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

 Q.遠方で母と2人で暮らす父(79歳)がMCIと診断されました。医師から認知症に進行しないように予防に取り組んでください、と言われたそうなのですが、「もう好きなようにさせてくれ」と言って、家にこもって一日中だらだらしているそうです。どうすれば前向きになってくれるでしょうか(51歳・女性)

A.認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)は、生活習慣の見直しなどに取り組むことで、認知症に進行するのを防げると言われています。家族としては、がんばって予防に取り組んでほしいと思いますよね。

認知症ではないとはいえ、MCIと診断されてお父さんはショックを受けているのではないでしょうか。まずはお父さんがどんな気持ちでいるのか、聞き出してほしいと思います。まだショックを受けている段階であれば、前向きになるには時間が必要かもしれません。家族としてできることは、「お父さんのことを大切に思っている」と伝えることです。家族からの愛情のこもった言葉は、お父さんが立ち直るきっかけになるかもしれません。

すでにショックから立ち直っている段階であれば、前向きに予防に取り組めるように、後ろから背中を押してあげられるといいですね。どんな言葉をかけて背中を押したらいいのか。お父さんと暮らしているのはお母さんなので、相談者とお母さんとで、一度作戦会議をするといいと思います。「だらだらしている」とのことなので、例えば朝きちんと起きてこられた日があれば「おはよう」とやさしく声をかけたり、さりげなく「今日は何をする?」と聞いてみたりしてはいかがでしょうか。一方、「がんばれ、がんばれ」と前から引っ張るような言葉は、無理強いによる意欲低下を引き起こすこともあり、避けたほうがいいと思います。

もしかしたらお父さん自身は、すでに予防に取り組んでいるつもりかもしれません。もしくは予防といっても何をしたらいいのかわからないのかもしれません。できればMCIの診断をした医師から、お母さんと一緒に具体的な予防方法を聞けるといいですね。帰省する機会があれば相談者も一緒に聞くといいと思います。そのうえで、医師に言われたことを無理強いするのではなく、「先生はあんなふうに言っていたけれど、どう思う?」というように、何に取り組むかはお父さんが選択できるようにしてほしいと思います。

予防は継続することが大切です。お父さんのペースで、お父さんが取り組みやすいことからできるといいですね。

【まとめ】MCIと診断されたのにだらだらと過ごす父。前向きに認知症予防に取り組んでもらうためには?

  • お父さんの今の気持ちを聞き出し、診断にショックを受けている段階ならお父さんを大切に思っていることを伝える
  • 「がんばれ」とはっぱをかけるのではなく、そっと背中を押すような言葉をかける
  • MCIと診断した医師から具体的な予防方法について、家族で聞く
  • どの予防方法に取り組むかは、お父さん自身が決める

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア